2012.1.1 希望

■ 『希望  杉山平一詩集』 編集工房ノア 1800円+税
「希望」 
 夕ぐれはしずかに
 おそってくるのに
 不安や悲しみの
 事件は

 列車や電車の
 トンネルのように
 とつぜん不意に
 自分たちを
 闇のなかに放り込んでしまうが
 我慢していればよいのだ
 一点
 小さな銀貨のような光が
 みるみるぐんぐん
 拡がって迎えにくる筈だ

 負けるな  
 杉山は1914年会津若松市生まれ、神戸・大阪育ち。旧制松江高校で花森安治、田所太郎に出会い、文芸に親しむ。東大卒業後、映画評論の他、同人誌「貨物列車」(田所ら)、「海風」「大阪文學」(織田作之助ら)に参加。中原中也賞小野十三郎賞など受賞多数。帝塚山学院大学名誉教授。

……そもそも、私は会津生まれでありながら、東北地方について無知であった。しかし私は、太陽の光に眩しく輝く南の海より、青インキのような北の海、高村光太郎が「キメが細かい」と言ったような北の青空が、好きである。
 うなじや太鼓帯の美しさが背中に隠れているように、東北地方の人たちは後ろ側にその美しさを秘めている。表からは見えないその奥ゆかしさや謙虚さを打ちのめすように、大震災が東北の街をハチャメチャにしていったのだ。今こそ、隠れていた背中の印半纏を表に出し、悲境を越えて立ち上がって下さるのを祈るばかりである。奥ゆかしさを蹴破って、激烈なバックストローク鵯越の逆落としさながら、大漁旗を翻して新しい日本を築いてくださるように。

 書名、本書が復興への気持ちを支える力となるよう、願いを込めて。
 もう1篇。
「反射」   
 毛布はあたゝかい
 そんなことはない
 あたゝかいのは
 あなたです

 ダイヤモンドは
 光るのではない
 光を反射するだけだ  
 あたゝかいのは
 あなたのいのち
 あなたのこゝろ 

 冷たい石も 
 冷たい人も
 あなたが
 あたゝかくするのだ

 (平野)本年もよろしくお願いいたします。 HP更新しています。
 http://www.kaibundo.co.jp/index.html

 紙版「週刊 奥の院」のトップはおめでたい『日本の笑い』(平凡社)。
“笑う顔には福来る”