週刊 奥の院 12.28

■ 加賀野井秀一 『猟奇博物館へようこそ  西洋近代知の暗部をめぐる旅』 白水社 2400円+税 
 ファインアーツと奇形の胎児 フランス国立博物館
 見世物小屋とフリーク・ショー つやま自然のふしぎ館」から「ピクルド・パンク」へ
 視覚の迷宮から人魚まで 展覧会「むかしむかし、見世物小屋があったとさ」
「パノラマ」と猟奇的視覚  ぬくぬくとした場所でカタストロフィーを眺める 
解剖学ヴィーナス、スピッツネル博士の大解剖学博物館……他
 人体、骨、死体、奇形……。ヨーロッパの王侯貴族、学者が競って充実させようとした「びっくり」コレクション。

……ここに一歩足を踏み入れるやいなや、だれもが、居並ぶ珍品奇品に「ヴィンダーバール(うわ、すごい!)」と驚きの声を上げ、あれこれと好奇心をかき立てられずにはいられない。本書は、そうして「驚異の部屋」を髣髴とさせ、現代の魔界を紹介するものであるとともに、みずからがその一部屋たらんとする目論見を秘めている。「好奇心」は百学の母であり、「驚異」は、アリストテレスも言うように、あらゆる哲学の端緒だとしてみれば、「驚異の部屋」とは、必ずしも興味本位の見世物小屋にとどまるものではなく、やがて高度な思想にさえ結実すべき、幻惑と情動に満ちた思索の淵源だと考えることもできるだろう。

方法序説』のデカルト(1596〜1650)は晩年スウェーデンに招かれ客死。遺骨がフランスに帰ったのは1666年。その骨を聖職者がほしがり、フランス革命時には「記念物保管所」の管理人が指輪にした。1819年教会に納められる時には頭蓋骨がなかった。そのミステリ話も。頭蓋骨は現在パリの「人類博物館」にあるそう。(「デカルトのちっぽけな頭蓋骨」)
 著者は1950年高知市生まれ。中央大学教授。専門は、哲学、言語学、フランス文学、日本語論。
(平野)
『いける本・いけない本 第15号』 同編集室 

 出版社トランスビューのお世話で毎回配布しています。出版社有志が集い、いい本を推薦。
「いい本を見つける。読む。
 おもしろさを人に伝える。
 それで世の中が変わると信じる
 野心まんまんの冊子です。」
 昨年から「いける本大賞」を発表。
 第2回いける本大賞
【大賞】 吉田敏浩赤紙と徴兵』(彩流社
     星野博美『コンニャク屋漂流記』(文藝春秋
【特別賞】 月刊『世界』(岩波書店