週刊 奥の院 12.14

■ 小池昌代 『自虐蒲団』 本阿弥書店 2000円+税  
 装幀 菊地信義  表紙の絵 竹久夢二
 月刊「俳壇」連載分と書き下ろし、連作短篇。登場するのは13人の“言葉師”たち。
 
 妊娠中の妻のお腹をなでながら、
「こども、こどもよ、ゆっくり眠れ
 まだ、生まれるなよ、地上は寒い
 こども、こどもよ、母なる海で
 遠い春の夢みよ、こども
……」

と、歌う詩人。

 弟子で愛人の太郎に、人形の太郎に託して思いを語る腹話術師恭子。話すうちにどんどん自虐的になる恭子に怒って、人間太郎は人形太郎を壊してしまう。恭子は人間太郎の頭にビール瓶をふりおろす。人形太郎と人間太郎を同時に失ってしまう。

 熱と頭痛をかかえながらも詩を書く女。同人誌の締め切りが迫る。
すべてを捨てて詩にのめり込んできた。離婚、高校生の娘は食べ物を自分で確保する。生活費は別れた夫からの援助。
書けない。詩をやめると、発行責任者と娘に宣言する。
「迷惑かけた?」と言って、娘にあきれられ、なじられる。
「気づいてないの。人間やめたら。詩、詩、詩って、それで稼いでもいないくせに。湯水のごとく、パパのお金使い続けて。……」
 一人になった部屋で女は思う。
 もっと痛みがほしい。まだ足りない。さらなる苦しみを! 私に苦痛を!
 もう一編、最後にもう一編だけ書かせてちょうだい。それでやめるわ。きっとやめるから。だから私にさらなる痛みを!
 
 ほかに、俳人、小説家、編集者、コピーライター、女優……。

(平野)岐阜の“徒然舎”ゆうさんが『ほんまに』を紹介してくれています。
http://d.hatena.ne.jp/tsurezuresha-diary/20111207
 こんなところでこんなことを書くのは、いけないことだと知りながら、この腹のトキメキを画面できない、ぼくの思いを受けとめて放り投げておくれ。
 變しい變しい“ゆうさん”ありがとう。
 今気がついたのですが“ゆふさん”が正しいのかな?