週刊 奥の院 12.1

■ 玉岡かおる 『負けんとき ヴォーリズ満喜子の種まく日々 上・下』 新潮社 各1600円+税

 兵庫女性小説。主人公は一柳満喜子(ひとつやなぎ まきこ)、旧小野藩主の娘、お姫さま。伯父は旧三田藩主・九鬼隆義、家老だった白洲退蔵と神戸で商社を経営。
 満喜子の家庭内は不和。父親、そして封建的な世の中と闘う。華族女学校ではなく官立に進み、アメリカ人教師から英語とキリスト教精神を学ぶ。神戸女学院で音楽。アメリカに長期留学。
 夫となるウイリアム・メレル・ヴォーリズキリスト教伝道のために来日、近江八幡で英語教師、近江兄弟社設立。建築家として活躍。教会・学校など今も全国に名建築が残る。楽器輸入や傷薬(メンタム)製造も。
 満喜子は通訳として彼と出会う。周囲の猛反対を乗り越え結婚し、近江で幼児教育を開始。戦争中、ヴォーリズは日本に帰化、一柳米来留(めれる)。
 戦後、彼の元に近衛文麿の使者が来る。マッカーサー天皇について説明(軍国主義者ではないこと)してくれと。「天皇を守ったアメリカ人」と言われる。
 書名は、満喜子が深く交わった大阪の豪商夫人・廣岡浅子の言葉から。

「負けんときや、おマキはん……勝とうとしたらあかんのどす。大阪は勝たへんのが華。相手を勝たしてなんぼが商売どす。けどな、負けへんのどす。絶対自分に負けんと立っとるのどす」

 玉岡さんは小野出身で神戸女学院OG。
 表紙の絵は、(上)関西学院と(下)神戸女学院のキャンパス。ともにヴォーリズの設計。
 女学院のヴォーリズの建築については、内田樹さんが「最終講義」で語っている。音声環境を優先的に配慮していること、学びの比喩とも言うべき「仕掛け」があちこちにあることなど、その素晴らしさを強調している。 『最終講義』(技術評論社より。
(平野) 本日より「神戸ルミナリエ」。地元民はあんまり関心なし。しかし、店外イベント。
1〜2日 愛媛県上島町 特産品販売
1〜4日 古書波止場オープン1周年記念 「古本百円均一セール」

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