週刊 奥の院 11.17

■ 北沢夏音 『Get back,SUB あるリトルマガジンの魂』
本の雑誌社
 2800円+税 
 http://www.webdoku.jp/kanko/page/9784860112226.html
1970年から80年代初めにかけて、神戸で最先端の欧米文化を紹介する雑誌を編集・発行している人物がいました。小島素治(1941−2003)、本書の書名にある『サブ』だけではなく、その前身である書評誌『ぶっく・れびゅう』を2号、『サブ』6号、後身『ドレッサージ』8号。間をおいて90年に東京でギャロップを2号出版。
『サブ』創刊号 70年12月5日発行 定価360円 縦237×横151 編集人:小島素治 発行所:サブ編集室 神戸市生田区山本通〜
特集=ヒッピー・ラディカル・エレガンス〈花と革命〉 執筆者 赤瀬川原平中平卓馬辻まこと富士正晴 他
 第2号 ビートルズ・フォア・エバー かまやつひろし横尾忠則草野心平淀川長治浅井愼平草森紳一武満徹 他
 第3号 世紀末としてのファッション 益田喜頓浜野安宏、横尾、浅井、辻、富士
 第4号 情報のカタログ メッセージはメディアである。 ジョンとヨーコの手紙、森本哲郎寺山修司松山猛 他

……
著者は62年生まれ。ライター、編集者。92年音楽誌『Bar-f-Out!』創刊。現在独立。小島素治の雑誌づくりに共感して、彼の「この後」を探っていく。手がかりはほとんどない。03年、ネットで小島の友人の日記に辿りつく。小島は逮捕され裁判中。その間にガンがわかり入院していた。見舞うことができた。気遣いながらインタビュー。
「……全てのはじまりは、1967年、モントリオールで開かれた万国博覧会の取材。……マーシャル・マクルーハンの話が向こうでものすごいセンセーショナルやった。……」 
 ビートルズ世界同時中継、ヒッピー讃歌、フランスはヌーヴェル・ヴァーグヌーヴォー・ロマン、イギリス<怒れる若者たち>……、小島は新しい若者文化に出会う。
「勢いに任せて『ぶっく・れびゅう』という雑誌を創って、これで瀧口修造さんと僕は出会うてるわけです」
 当時、『平凡パンチ』や『an・an』が最先端の文化を紹介していた。その『an・an』が『サブ』を紹介してくれた。『サブ』の名づけ親は谷川俊太郎さん。
 インタビューの1カ月後、小島は亡くなる。
 著者は、関係者に取材し「小島」と『サブ』を追う。雑誌『クイック・ジャパン』に足かけ5年連載、500ページを超える大著。
 私はこの雑誌を知らない遅れてきた世代です。だから紹介するのは憚っていました。どうも、この本と小島氏について【海】でイベントがありそうです。詳細は決まり次第お知らせします。
(平野)