週刊 奥の院 9.29

■ 佐藤周一 『震災に負けない 古書ふみくら』 出版人に聞く(6) インタビュー・構成 小田光雄 論創社 1600円+税
 
 佐藤さんは、1948年福島県長沼町(現須賀川市)生まれ。学生時代の取次返品アルバイトから図書館資料整備センター、出版社勤務を経て、83年に郡山市に「古書ふみくら」開業。本書の半分が開業までに充てられている。
 当初故郷で新刊書店を開くつもりだったが、取次のリサーチで経営困難と判断、駅前6.5坪の古書店となった。

(東京で)買いつけた社会科学書と自分が集めていた民俗学の本から始め、郷土史を充実させ、コミックや雑誌も扱うようになった。……(徐々にお客がつき)自分が元々郷土史を趣味にしていたようなところがあり、地方で古本屋をやるのであれば、郷土史に力を入れようと考えていた。(郷土史・地方史への関心、市町村史の刊行ブームに)便乗していたことも作用していた。しかしブームというものは終わるものですから……。

 60年代のブーム、地方出版も盛んになる。70年代は国鉄の「ディスカバージャパン」キャンペーン、各地のタウン誌発刊など。80年代になると、全国で消費型社会化、地方は衰退していく。
 佐藤さんは13年前に須賀川に支店を出す。仕入の窓口。ここは「白河藩の台所」と言われた街で、旧家に史料が残っている。自由民権運動の貴重史料などを発掘し仕入れることができた。
 また、「ふみくら」の目玉は絵葉書。全国有数の在庫を誇る。本書巻末に「絵葉書にみる福島の風景――明治・大正・昭和初め」を掲載。カバーの写真も絵葉書。
 地方の古書店の状況、郷土史の下落、図書館行政、催事と即売会など切実な問題点を語る。大震災の被害で須賀川店は再開できていない。それでもネット販売と即売会を充実させ乗り越えていきたいと抱負。
 佐藤さんが6月の古書通信に書いた文章がある。「福島県浜通り原子力発電所」から。
 

頑張れと人は言う。でも何を頑張れと。是も辛いことである。原発が安定する頃には、多分小生の寿命も閉じている。これからの時、それでも未来を信じなければならない。

【海】10月ブックフェア「福島・会津からの風――福島出版社フェア」 本書も加えさせてもらいます。
(平野)