週刊 奥の院 9.18

■ 馬場マコト 『花森安治の青春』 白水社 2300円+税
 著者は広告マン、数々の賞を獲っておられる。昨年『戦争と広告』(同社)で、広告デザイナー山名文夫(やまなあやお)他、国家と企業の戦争宣伝活動を取り上げた。本書は続編として、「花森安治」の活動を追う。
 ご存知のように、花森は名編集者であり社会評論で著名、反戦平和を力強く訴えた。しかし、戦中は大政翼賛会の宣伝部員だった。このことは花森も明らかにしている。
 著者は、「釈然としないもの」を感じる。
 花森「ボクは、たしかに戦争犯罪をおかした。言訳をさせてもらうなら、当時は何もしらなかった、だまされた」
 
 

 あの強気の花森安治が、一番使いたくないことばであろう、「だまされた」ということばを使っても、封印しようとした、大政翼賛会とはなんだったのだろう。
 なぜ花森安治はかたくなに、大政翼賛会時代を封印したのか。

 著者の立場は、花森を弾劾したり過去を暴くものではない。
 

 私は、人は戦争にどう反射する動物なのかを知りたいだけだ。
 花森安治という強靭な精神さえ、戦争に反射し、傾斜し、疾走した事実に興味をもつのだ。
……
 いざ戦争が起きてしまえば、多くの人は戦争に協力してしまう。
 人間は戦争に反射し、発熱し、疾走する動物なのだ。
 そんなことはない。一人ひとりが大地に足を踏みしめ、踏んばればいいと言う人もいるだろう。
 しかし、私はできない。
 反戦を言いつづけ、孤立する勇気は、恥ずかしいが私にはとてもない。
 私はとても弱い。

 それでも、花森の大政翼賛会時代の広告の責任は、花森にある。
 

 経済がなくなり、戦争という時代がやってきたとき、私は花森安治と同じように「戦争と広告」「広告と戦争」を語るクリエイティブ・ディレクターに就くだろう。
 それが怖いのだ。そんな自分の弱さが。
 だからこそ、戦争が起きてほしくないと願う。
 だからこそ戦争を起こしてはならないのだと考える。

 花森の生い立ち、従軍、大政翼賛会時代を丹念に辿る。
 こちらを。http://www.hakusuisha.co.jp/detail/index.php?pro_id=08168

(平野) 天候は不順ですが、岩田健三郎原画展」盛況です。海文堂での展示ということで、「本屋」「古本屋」をテーマにした作品を選んでくださっています。岩田さんとスタッフの皆さんの思い入れを感じ、恐縮いたします。
 どうぞご覧いただきますよう。