週刊 奥の院 8.22

■ 下川耿史 『盆踊り  乱交の民俗学』 作品社 2000円+税
 同社、久々の“スケベ文化史”、違いました、同社のは「異端と逸脱の文化史」です。
「盆踊りと、それにまつわる性風俗」の話ですが、「盆踊りが下品として排除されていく過程を追跡」することに。
「乱」と「交」、2文字に嫌悪感を持たれる方もおられましょう。が、著者の研究では、

 記録の上では太平洋戦争が終わった頃まで残っていたことが確認できるし、話だけなら「現在も行なわれている」という土地がいくつもある。見知らぬ男女の性関係は、変態どころか、それが日本人の性関係の基本の一つであり、社会構造の根幹に組み入れられていたのである。……

目次  はじめに 盆踊りと乱交――民俗文化のエロティシズム
第1章  歌垣――乱交の始まり
第2章  雑魚寝と夜這い
第3章  踊り念仏の供覧と念仏踊り
第4章  盆踊りの全盛と衰退
おわりに  性的共感こそが民俗文化を創り上げてきた

 記紀万葉の時代、山や磯に大勢の人が集まって、豊穣を祈る行事があった。そこでは性の交わりもあった。
「……お互いに見知った同士が、時には見知らぬ同士でも歌を交換するうちに気分が高揚してくれば、その場から離れて二人だけで関係するというもので、これが歌垣である」
 花見や潮干狩りはその名残りらしい。
 生産と生殖が結びついた、性そのものを表現している民俗行事が各地にある。歌垣から和歌が発達していったし、若者組によって「風流(ふりゅう)」といわれる各種芸能が広がった。
(平野)