週刊 奥の院 8・21
■ 古川綾子 『上方芸人 自分史秘録』 日経ビジネス人文庫 933円+税
著者は1973年生まれ。2001年より上方演芸資料館(ワッハ上方)学芸員。もう少しで「学芸人」と書くところだった。
上方芸人24名の自伝・芸談からそれぞれの人生をたどる。
「自慢話はあたりまえ、事実誤認も多々あるが、舞台でフィクションの世界を繰り広げた芸人さんらしく、虚実入り交じりながらも説得力に富み、読みごたえ充分のおもしろさ」
六代目笑福亭松鶴 松鶴は六代目が最高やった――「うちのおやっさん」伝説うらおもて。
岡八郎 奥目の八ちゃん、ドタバタ人生の陰と陽。
横山エンタツ しゃべくり漫才のパイオニア。
四代目桂米団治 不肖の弟子の詫び状。
ミヤコ蝶々 おもろうて、やがて哀しき80年。
花菱アチャコ 近代漫才の元祖、泣き笑い遊芸人生。
砂川捨丸 骨董品にこそ宿った、漫才の心。
藤山寛美 拍手のない芝居人生を演じきった、新喜劇のプリンス。
……
梅中軒鶯童、旭堂南陵、変わった芸ではステージ漫画の木川かえる。
帯に春風亭昇太さんの推薦文。
「これは芸道という魔界に住む怪物図鑑だ!」
エンタツ・アチヤコの漫才は戦前のこと。それぞれが喜劇に出てはりました。古い漫才は捨丸師匠。「エー、まんざいのこっとうひんで〜」の出だし、紋付・袴、鼓を操りながらのスローテンポで、異彩でした。今でも覚えているネタ。
「戸を開けようとして、手を挟んで、しまったー!」
「戸を閉めようとして、手を挟んで、あいた(痛)ー!」
相方は貫禄のある春代さん。おふたりの掛けあい、ユーチューブで聞けます。お若い頃のはスピーディです。
http://www.youtube.com/watch?v=deGrpeZhi7A
この人の話、読みたい。
(平野)