週刊 奥の院 8.14

■ 西野嘉章 『新版 装釘考』 平凡社ライブラリー 1600円+税 解説:紀田順一郎

 著者は1952年生まれ、東京大学総合研究博物館館長・教授。博物館学、書誌研究。
http://www.um.u-tokyo.ac.jp/
 2000年玄風舎刊行の増補改訂版。近代日本の出版、美術、書誌を含む造本の歴史。
 元版はこちらでご覧いただけます。http://fukuhen.lammfromm.jp/?p=344
 (目次)  近代造本史略――序にかえて――
活字 『學問のすゝめ』(福澤諭吉・小幡篤次郎) 合金鋳造活字以前の印刷の苦心
南京綴じ 『歐洲奇事 花柳春治』(リトン著、丹羽純一郎譯、服部誠一校閲 明治初期の洋製本の綴じ方 
和装、改題御届、背文字、稀密画、合綴、三六版、装画、菊版、外函、袖珍本…… それぞれの項目で本と造本に関する話が語られる。

「本」はモノである。大きさもあれば、目方もある。また、手にしたときの感触があり、場合によると、特異な臭いさえある。モノとしての紙があり、文字や図版が刷られ、折られ、綴じられ、装いを訂されたモノが本であり、それが人伝てに流通することでもって、「本」の文化がかたちづくられる。……
「本」を読むとは、紙背越しにその世界を透視することに他ならない。「本」を紙面上のテキストへ還元してしまっては、妙味に乏しい。文書を読むだけで善しとする、そうした偏狭な眼差しが、モノとしての「本」の存在を貶めてきた。……
 思えば、明治生まれの文豪は、誰もが「本」の姿について一家言を有していた。自らの思想や信条、情念や心象を「本」として公表するにあたって、どのような形式がもっとも相応しいか、そのことに腐心して、忽せ(ゆるがせ)にすることがなかったのである。こうした姿勢すなわち、創作者として当然であるべき姿勢の保たれていた時代の「本」は、どれも構えが良い。……

「釘」の字については、紀田さんの解説をお読みください。
(平野)