週刊 奥の院 8.3
■ 河内一郎 『漱石のユートピア』 現代書館 1600円+税
著者略歴、本書のまま。
河内一郎(こうち いちろう)
1940(昭和15)年、東京生まれ。44年、山梨県に疎開。
山梨県立甲府第一高等学校、中央大学商学部卒業後、缶詰製造元・総合食品商社の株式会社サンヨー堂入社。同社に38年間在職の後、退社。
高校時代からつづけてきた漱石研究のテーマを“食”に絞り、調査を開始。
神奈川近代文学館・友の会会員。
著書に『漱石、ジャムを舐める』(新潮文庫)、『漱石のマドンナ』(朝日新聞出版)がある。
本書は前著2冊の取材で得たこぼれ話19話をまとめる。
目次
夏目漱石 プロフィール
1.『行人』にかかれている漱石のユートピア紅ヶ谷(べにがやつ)とはどんな所か
2.清の話
3.漱石に孫は何人いるか
……
7.虚子と漱石、松山でステーキを食う
8.漱石、ライスカレーを食う
9.漱石の食べた米
……漬物、みかん、海苔、軍鶏、いなり鮨、おでん……
明治43年胃潰瘍療養のため、修善寺。8.24そこでも大食。
「青年期から神経症の胃病に悩まされつづけていたというのに、漱石は食いしん坊だった。鏡子夫人の目を盗んでは菓子を食べ、あとで胸やけや胃もたれを訴えては夫人に叱られていた。この朝も夫人のうるさい口がないのを幸い、朝から三杯飯を食べてしまった」(関川夏央『不機嫌亭漱石』・双葉社)
大吐血して一時危篤状態になった。
■ 『仙台学 vol.12 東日本大震災 揺れ痕の声』 荒蝦夷 1100円+税
表紙はじめ写真のほとんどが、犠牲者に手向けられた花。モノクロの花々が悲しい。
今号も多くの寄稿者が東北関係者。取材で現地入りした稲泉連、佐野眞一、関野吉晴、平山夢明各氏も。怪談の連載再開。
稲泉連 「希望」と「絶望」 勝山海百合 上書きされた記憶 鎌田慧 生ぎろ東北! 佐伯一麦 絶望に情熱を 佐野眞一 小文字で語る
関野吉晴 被災地を診る 野添憲治 新たな記録のはじまり 平山夢明 地獄をみる日 藤原作弥 〈東北と私〉のあれこれ 森繁哉 地続きとしての生、被災の人たち。
(平野)