週刊 奥の院 7.19

■ 伊東乾治 『贈答の日本文化』 筑摩選書 1500円+税

 著者、1930年生まれ、国立民族学博物館名誉教授。『柳田邦男全集』編集委員民俗学、人類学の著書多数。
「贈答とは単なるモノのやりとりではない。特定の機会に贈りものをやりとりする儀礼的行為」
 日本での贈答の習慣は中世後期の武家社会には成立していた。室町幕府要人の記録に、他家からもらったら、それに見合うお返しをしなければならないことが記されている。「均等交換」と言うそうだ。これが現在まで続いている。しかし、贈答にも種類がある。
1 近代以前から行われている贈りもののやりとり。中元・歳暮、結婚・葬式など。
2 近代以降欧米から年中行事に取り込まれた贈りもののやりとり。クリスマスなど。
3 1970年代以降、大衆消費社会のなかで企業によって創案され若者たちに普及した贈りもののやりとり。バレンタインデーなど。
4 グローバル化・ボーダレス化に伴う不特定多数の「見知らぬ人びと」への公的贈与。寄付・寄与、ボランティア活動、臓器移植、開発援助など。
 日本では近代以前から伝承されている民俗文化と、明治以降創出された共通文化が並存している。文化人類学の贈与論や社会学の社会交換論を手がかりに贈答の世界のメカニズムを明らかに。また、「恩と義理」についても。
 目次
序  贈答の世界を解読するために
一  贈答の過去と現在
二  贈答の仕組み
三  贈答の諸相
四  贈答と宗教的世界
終  贈答と現代社

 あとがきから。 
 本書は、文化人類学民族学)と民俗学という、二つの学問領域にまたがっている。伊東さんは二つの境界領域で研究をしてきたが、現在両学問は相互交流がない状態が続いている。学問的に好ましいことではない。文化人類学=「他者としての異文化」を研究する学問と、民俗学=「自己としての自文化」を研究する学問が、「再び親しい関係に再帰すること」を希望して本書をまとめる。

モノをもらったらお返しをする。貧乏人はお返しできないときもある。返すあてがない、心苦しい。
 複数で呑む、つがれると返杯しなければならない。これはジャマクサイ。だから、当店の呑み会では手酌が恒例となっている。
(平野)碧野さんブログ更新。あゆみBOOKS仙台店
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