月曜朝礼 新刊紹介 続き & 奥の院

月曜朝礼 続き 【芸能】アカヘル撰
■ 青柳いずみこ 『グレン・グールド  未来のピアニスト』 筑摩書房 2200円+税

 グールドについての論考はほとんど邦訳されていると言っていいほどの偉大なピアニスト(らしい、すまぬ、私、音楽知識なし)。
 著者の青柳さんはピアニストで文章家(名前くらい、知っているぞ。えばるな)、エッセイストクラブ賞他受賞。
 グールドは31歳7ヵ月でコンサートから引退してレコーディング・アーティストとして活動。著者は、彼をアルチュール・ランボー、レーモン・ラディゲと並べて、その天才を称える。
しかし、グールドには、ランボーヴェルレーヌやラディゲのコクトーに当たる存在――「神に与えられた才能を感知し、信じ、励まし、広める役割の先輩」がいなかった。
また、グールドの芸術は演奏という「その場で消滅する芸術」。

 ピアニストの悲劇は、真に霊感を得た演奏をしたところで、それを再びくり返さないことには認められないというところにある。くり返すどころか、何十回も何百回も、異なる国の異なる聴衆を相手に、異なる楽器をとおして再現しなければならない。再現するどころか、さらなる霊感に満ちた演奏を求められる。……
 パフォーミング・アーティストの宿命である。
 グールドは、この厳然たる、しかしいかにも理不尽に思われる宿命に立ち向かおうとした、たった一人のピアニストである。ランボーは三年で詩作をやめ、ラディゲは三年で死んでしまったが、グールドは五十歳まで生きて、戦った。彼にはその〈時間〉がぜひとも必要だったのだ。

 青柳さんの尊敬の気持ちと切ない思いが伝わる。
 ここからいつもの「奥の院
■ 梯久美子 『昭和二十年夏、子供たちが見た日本』 角川書店 1700円+税

「昭和二十年夏〜」シリーズ、『〜僕は兵士だった』『〜女たちの戦争』に続く3冊目。当時の子供10人の体験談。
 

 私は疎開してみたかったのね。  
 違うところに行ったら、違う世界が見えるんじゃないか、別の運命があるんじゃないか、そう思ったの。   角野栄子 当時小5

 僕はね、少年飛行兵になるつもりだったんです。そのために手旗信号も一生懸命覚えたし、録音された飛行機の爆音を聞いて、機種を当てるのも得意だった。  
 児玉清 小6

 生まれたのは満洲です。満洲国が成立したのは昭和七年。私の生まれる前の年です。私たち母子が満洲を出たのが昭和一九年で、その翌年には満洲はなくなってしまった。
 満洲は、まぼろしです。ちょうど私がそこにいたときだけ、この地上に存在してくれていた国なんですね。  
 辻村ジュサブロー

 子供でも闇市でものを売ったりするのかって? 当時の子供は何でもやりましたからね。鶴橋で煙草を売っていた子供は、僕を入れて、四,五人でしょうか。元締めみたいな人がいて、そこから卸してもらって、一箱売ると何円かになった。売れるとやっぱり面白いんです。  
 梁石日

 他に、中村メイコ山田洋次五木寛之ら。
 みんな必死で生き抜いてきた。
(平野)