月曜朝礼 新刊紹介
【文芸】
■ 河野裕子・永田和宏
『たとへば君 四十年の恋歌』 文藝春秋 1400円+税
河野裕子さんが亡くなってもうすぐ1年(8月12日)。日曜夜、NHK教育で特集番組があった。本の紹介は特になかったそう。
夫妻の相聞歌、少なめに数えても、河野さん500首余、永田さん470首ほど。永田さんの挽歌100首以上。本書ではふたりの380首掲載。
文章を引くのはとてもつらいので、恋の歌を。
歌には流れがあるので、歌集で前後の歌を読むとよいそうです。
河野裕子
たとへば君 ガサッと落ち葉すくふやうに私をさらつて行つてはくれぬか
くすの木の皮はがしつつ君を待つこの羞(やさ)しさも過ぎて思はむ
わが頬を打ちたるのちにわらわらと泣きたきごとき表情をせり
息あらく寄り来しときの瞳(め)の中の火矢のごときを見てしまひたり
ブラウスの中まで明かるき初夏の日にけぶれるごときわが乳房あり
かばひくるる君傍へにあはあはとひるがほのごと明かりてゐたり
永田和宏
きみに逢う以前のぼくに遭いたくて海へのバスに揺られていたり
いだきあうわれらの背後息あらく人駈けゆきしのち深き闇
水のごとく髪そよがせて ある夜の海にもっとも近き屋上
あなた・海・くちづけ・海ね うつくしきことばに逢えり夜の踊り場
きまぐれに抱きあげてみる 君に棲む炎の重さを測るかたちに
おもむろにひとは髪よりくずおれぬ 水のごときはわが胸のなかに
【芸能】もあるのだけれど、原稿を店に忘れた。次回。(平野)