週刊 奥の院 6.29

■ 草森紳一 『記憶のちぎれ雲  我が半自伝』 本の雑誌社 2800円+税
『クイック・ジャパン』(太田出版)に04年から07年連載した人物評伝。著者の生前、これ以外の人物モノをまとめる構想があったが叶わず。
 草森が『婦人画報』編集者から文筆業に転身する頃(1960年代)に出会った人たち。
「直鍋博」……「一九六〇年代は、日本列島のどこもかしこもが、直鍋博のイラストレーション(刺青)で、埋め尽くされていたといっても大袈裟ではない」という存在。その人に初対面で、女性ファッション画、それも下着の絵を要求した。翌日直鍋から電話、断わりの連絡かと思えば、逆に別の雑誌に原稿を書けという依頼。
「予期せぬ待ち伏せ(無智)によって、自らの針路が規定されていく」ことになる。
古山高麗雄」との出会いも直鍋の紹介。古山は『芸術生活』副編集長。
田中小実昌」は既にミステリ翻訳で有名。原稿を受け取り、その場で読む新米・草森。田中「やり直します」と持ち帰った。
 他に、中原淳一葦原邦子伊丹一三(十三)、そして多くの若き才能たちが登場する。彼らとの関わりは、草森の青春時代そのもの。
(平野)「女子の古本市」、まだあと片付けが続いています。準備より、こっちの方がたいへんかもしれない。「女子古」の皆さん、ありがとう。