週刊 奥の院 6.24


■ 蝦名 則(えびな のり)
『えびな書店店主の記』 企画制作:四月と十月文庫 発行:港の人
 
1200円+税
 著者は、1950年生、青森県出身。雑誌編集者を経て、82年小金井に美術書中心の古書店を開業。87年から古書目録「書架」発行。
 

 小店は開店二十年を迎えました(二〇〇二年)。新聞記者志望が試験に落ちて美術や工芸雑誌の編集者となり、その雑誌も廃刊になって学研の美術出版部でしばらく食べさせてもらい、見切りをつけて古本屋になったのが一九八二年の七月でした。……
 知り合いから譲り受けた三.七五坪の店に隙間なく本を並べました。ガラス戸は取り払って道路に面して文庫の棚、内側はマンガの棚……ビニール本三列、男性雑誌が三列あって……外国文学もありました。美術書やカタログ、さらにはみすずや岩波の本もあるという、総合小型古書店、典型的な街の古本屋がしばらくしてでき上がりました。……
 食えればいいと始めた古本屋でしたが、好きなものですから美術書仕入が少しずつ増えていきます。親しくなった同業者からあるとき自家目録があることを教わりました。美術書で自家目録を作れないものかしら、という想いがいつも頭を占めるようになって実を結んだのが「書架」第一号です。

【追い書き】(夫人のことば)
 

 私は商売にも商品にも全く関心を持たないまま、夫の側で三十五年間生きてきた。古いものに興味があればなんと楽しい仕事だろうと心底思うこともあるが、こればかりは仕方が無い。……
 結婚したとき夫は無職だった。普通ではありえないことだが、親戚に保証人になってもらって就職した会社を一日か二日で辞め、次の会社ではコピーライターの養成講座に社命で行かされていたのをパチンコ屋で過ごしていたそうな。……
 夫は出版社時代も古本屋になってからも本当によく働いた。帰宅はいつも夜中を過ぎていた。仕事は自分がのめり込むと適当にはできない性格なのだろう。……

 赤貧時代のことを明るく語っておられる。共通の楽しみである旅を続けたいと。お人柄である。極道モンの亭主を支えた賢夫人のご苦労を勝手に想像、ウルウルしてしまう。私、いつだって女性の味方です。
「四月と十月」は、本書装幀の牧野伊佐夫さんを中心にした美術同人誌(年2回発行)。今後も出版あり。 
「港の人」はこちらを。 http://www.minatonohito.jp/products/111_02.html
(平野) 「『女子の古本屋』による女子の古本市」、準備をしてくれているご近所様、ありがとう。
 忙しい中、ハニカムさんが……http://honeybooks.exblog.jp/12926186/ 
 本日開幕。本心を言えば、野郎共には来てほしくないのだけれど、ソデすりあうもなんだかねー、の世の中やさかい、本好きはとにかく来てちょうだい。この世の極楽でっせー!