週刊 奥の院 6.12
■ 村瀬学=編 小川哲生=著 『編集者=小川哲生の本 わたしはこんな本を作ってきた』 言視社 2000円+税 装丁=菊地信義
小川さんは1946年宮城県出身。70年大和書房入社、90年JICC出版局(現・宝島社)、95年洋泉社。2010年3月からフリー。
本書はもともと引退記念の私家版として作った冊子。新聞コラムに取り上げられ反響を得て市販。
1990年【鄭義著・藤井省三訳『古井戸』、吉本隆明『柳田国男論集成』、小浜逸郎・芹沢俊介他著『家族はどこまでゆけるか』】から、2010年【渡辺京二著『黒船前夜――ロシア・アイヌ・日本の三国志』、村瀬学『「食べる」思想――人が食うもの・神が喰うもの』】にいたる本を関係者・メディアに寄贈する際に、同封した文書をまとめたもの。付録に、著者たちによる小冊子。
小川さんは無名の書き手を発掘してきた。
……それは編集者の目利きというか、鑑定力、判断力が試される危険な賭けであった。たいていの出版者や編集者は、できるだけ名の通った書き手に書いてもらいたいと思うものだ。売れることがわかっているものを作りたい。もちろん小川さんもそうである。売れる本をつくらないといけない。そんな中で、小川さんは無名の新人へのアプローチも意図的にされてきた。……話はこれからなのだ。小川さんの目利きは当たってしまうわけで、新人は、本が売れると名が知られてしまう。すると、他の出版社からお声がかかる。そして、その出版社から本が出る。……(村瀬学)
村瀬さんは「損な役回り」と表現する。一度や二度ではないのでしょう。きっと大手からでしょう。
『黒船前夜』挨拶の文書から引く。
……名著『逝きし世の面影』からはや十余年。あらゆる分野の人から続編への要望が絶え間なく私どもに寄せられておりましたが、今回、ようやくその続編が刊行されることになりました。まさに満を持しての刊行となります。
(略、本書の概要と著者の言葉を紹介して、最後に「私事」と)
本書は、私にとりまして、長年の編集者生活の最後を締めくくるものの一冊として、刊行するものであります。厳密にいえば、最後の本の二冊のうちの一冊でありますが、若年時に渡辺京二さんの『評伝宮崎滔天』を刊行させて頂いた編集者として、自分のキャリアの終わりに尊敬すべき人とまたご一緒できたことは感慨深いものがあります。あえて触れさせていただきました。
……(略、書評・紹介のお願い)
(平野)