週刊 奥の院 6.4

■ ハロルド・ハーツォグ 『ぼくらはそれでも肉を食う 人と動物の奇妙な関係』
訳:山形浩生、守岡桜、森本正史  柏書房
 2400円+税
 ウェスタンカロライナ大学心理学科教授、「人類動物学」。人間が他の生物種との交流を図るときの心理のあり方について研究。
はじめに  なぜ動物についてまともに考えるのはむずかしいんだろう?
第1章  人間と動物の相互関係をめぐる新しい科学
第2章  かわいいのが大事――人間のようには考えてくれない動物についての、人間の考え
第3章  なぜ人間は(そしてなぜ人間だけが)ペットを愛するんだろう?
第6章  見る人しだい――闘鶏とマクドナルドのセットメニューはどっちが残酷?
第7章  美味しい、危険、グロい、死んでる――人間と肉の関係
第9章  ソファにはネコ、皿には牛――人はみんな偽善者?
……

 ペットのヘビの餌に生きた動物を与えることと肉食動物であるネコを飼うこと、その道徳的責任は? イルカはセラピストか? 動物をいじめる子どもは暴力的な大人になるか? ペットとは? なぜ肉はおいしいのか? 日本の子どものカブトムシ好き、ペットかおもちゃか?

……肉を食べていると恥ずかしげに告白する菜食主義者。自分のニワトリへの愛を表明する闘鶏士。自分の犬種を改良しようとして、何世代も遺伝的な欠陥を持つ動物を生み出した純血種犬の愛好家。救ったつもりの動物たちを汚物まみれにして、言いも言われぬ苦しみを与える飼いだめの人たち。いまのわたしはこうした矛盾が、異常でも偽善でもないと思うにいたった。(……ある哲学者の「わたしの哲学は、あらゆるものはみんなの思っているより複雑だ、というもの」を引用して……)
 人類動物学という新しい科学が明らかにするのは、暮らしのなかの動物たち――愛するもの、嫌うもの、食べるものすべて――に対するわたしたちの態度、ふるまい、関係もやはりみんなが思っているよりもずっと複雑ということなのだ。

(平野)