週刊 奥の院 

■ 中村文孝『リブロが本屋であったころ――出版人に聞く(4)』 インタビュー・構成:小田光雄 論創社 1600円+税
 同シリーズ、3人目の書店員経験者。芳林堂書店、リブロ、ジュンク堂書店。現在「ブックエンドLLP」代表。復刻、復刊、少部数出版の支援をする。

 http://www.llpbookend.co.jp/?page_id=11
 リブロ時代を中心に。店頭より、店舗デザインや商品構成、取引先選定、新規出店の仕事が主。神戸出店の時も書店組合に交渉に来られていた。リブロ誕生、躍進と衰亡をよく知る人。ブックフェア、業界内のさまざま人のつながり、直取引、小出版社、取次会社、出版社の倉庫など流通現場を語る。

 本を取り巻く環境はますます悪くなってきて、特に流通の現場は先の見えない閉塞感に支配されています。打開する手法が見つからずに、いたずらに時間ばかりが過ぎてゆく。こんな時だから、ちょっとした手がかりでも検討さらに実行しなければならないのに、何故かしら出版界に携わる人の多くは、既成の流れにしがみついて、状況を他人事のように横目で見ているだけです。(略)
 澱んだこの業界でとくに影響を受け、逼迫しているのが書店で、このまま座していては消えゆくのを待つばかりです。取次店を通ってきた出版物をただ並べていただけの書店の多くは、すでにそのほとんどが消えてしまいました。だから今残っているのは、何らかの工夫をしてきた書店ですが、それも持ち堪えてきた体力がそろそろ失われつつあります。

 大型店でも一部を除いて「並べる面積が広い本の置き場にすぎない」と言う。
「自らの意志で注文することによって仕入をしなければ、小売店としての姿に到達できない」
「必然的に再販制、委託制の問題すべてが邪魔になってくる」

 制度について私は今とやかく言わない。
 業界紙に、ヨソの書店員さんが書いていた。ある日の「新刊送品」200冊あまりのうち、本当の「新刊」55冊、あとは「重版」と「訳のわからない送りつけ」。必要な本だけ取ると、返品率60数%。
 業界外部の方は無駄なこと、と思われるでしょう。でも、一旦納品された「200冊あまり」の代金を本屋は支払わなければなりません。「返品」が計上されるのは先のことです。お金が集まる「段階」があります。そこから優先的に支払いを受けるのは「大手」です。
 
 なるべく「自主仕入」を心がけていますが、私の「スケベ根性」と言いますか、「せっかく配本されたのなら置いておこうか」となってしまう。
「ひょっとしたら、売れるかも……」
「スケベ根性」としか表現できません。
(平野)