週刊 奥の院


■ 出久根達郎 『古本歳時記 俳句つれづれ草』 河出書房新社 1600円+税
『俳句研究』連載「一句萬象」(2002.1月号〜04.11月号)から。
 季節の俳句と身辺を綴るエッセイ。
 あとがき「古本屋の意地」
 句は、
麦秋や書架にあまりし文庫本  安住敦」
 大震災当日のこと。机で、液体糊が残り少なくなって別の容器に移しかえていた時、急に揺れた。5、6分続いた。2週間後に古本市で講演をする予定だった。当然中止になると思っていたら、被災者救済チャリティに。
 

 こういう時だからこそ、書物のよさ、書物の力、書物の役割というものを、皆に知ってほしいのです。同業者が力説した。
 その言や、よし。余震が心配だが、実は半分おびえているのだが、書物文化の灯を消したくない。私は小説家というより古本屋の意地になっている。これから講演会場に出かけるところである。

■ 坪内祐三 『書中日記』 本の雑誌社 1600円+税 

本の雑誌』連載、2006年2月号〜11年3月号。
荒木一郎の父親はキクチ・ショーイチだった」
江戸川乱歩福田恒存山岡荘八が顔を並べる座談会」
「直樹と違って春樹は映画に出演していません」
矢沢永吉って日大生だったの?」
……目次を見て拾い読みするだけでも楽しい。本に関する硬い話・軟らかい話のあれこれと街歩き。
 新聞社の話題で、“うちの「文ちゃん」”登場。
 私、無礼で理不尽で非常識なのは承知の上で、「グヤジーイ!」と叫ぶ。

(平野)