月曜朝礼 新刊紹介

【文芸】クマキ
永田和弘 『もうすぐ夏至だ』 白水社 1900円+税
京都産業大学教授、細胞生物学。歌人、「塔」主宰、「朝日歌壇」選者。初めてのエッセイ集。昨年亡くなられた夫人・河野裕子さんとの日々はじめ、著者の「大切な時間」が語られている。
 夫人との出会いは大学二回生。「歌に浸かりっきりの生活」で、大学院入試に落ち就職、結婚。「学問というものにすっかり見切りをつけたはずなのに、こんなに面白いものだったのか」と、29歳の時大学に戻る。無給。塾の講師・研究・歌の「3本立ての生活」。
「このころのわが家は、河野との戦争のようなものであった」
 子育ての真っ最中、「金はもちろんなかったが、何より時間が欲しい」。
 






 私の歌に割ける時間は、真夜中にかぎられており、それにはだいたい河野もつきあって何かを書いている。……仕事のできる部屋は一部屋しかない。炬燵の向こうとこちらから足をつっこんでスタンドの灯を奪い合うようにして、書く。

 子どもが泣くと、どちらが面倒を見るかでケンカ。その頃の歌。
  睡り足りることなき日々の窓越しに泰山木の花銹びやすし
  憎しみは妻に発して子におよぶ子なれば妻なればその夫(つま)なれば

 歌をやめて研究に集中すべきか、医者で歌人の先達に質問する。答えは、
「一番おもしろいと思うものをやること」
 二足の草鞋でいいのだと思い切れたのはそれから数年後だった。
  きみに逢う以前のぼくに逢いたくて海へのバスに揺られていたり
  ともに陥つる睡りの中の花みずききみ問わばわれはやさしさをこそ

 表題作は昨年6月の新聞エッセイ。夫人のガン再発から1年。

 夏至は嫌だ。あとは明るい時間がどんどん短くなってゆくばかり。
  一日が過ぎれば一日減つて行く君との時間 もうすぐ夏至  
  この家に君との時間はどのくらゐ残つてゐるか梁よ答へよ(河野裕子

 このあとの文はつらくて、紹介できず。

森絵都 『この女』 筑摩書房 1500円+税 阪神・淡路大震災前夜、神戸と大阪(主に釜ヶ崎)を舞台にした恋愛小説。15年たって、行方不明の青年の小説が見つかる。
 担当者の弁:直木賞受賞後、あまり目立たなかったが(関西の姐さん風の表現でしたが、平野の責任でやんわりと)、新境地を開いたのではないでしょうか。







【児童書】 
エルジェ 「タンタンの冒険」シリーズ 映画化。ピーター・ジャクソン×スティーヴン・スピルヴァーグ 『タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密』 12月全国ロードショー。これに伴いペーパーバック版限定販売。全24冊を偶数月に6冊ずつ刊行。各700円+税
http://www.fukuinkan.co.jp/ninkimono/tintin/
 私、恥を忍んで申し上げます。むかーし、「TINTIN」をローマ字読みして笑われ怒られました。






【婦人・実用】
やましたひでこ 『俯瞰力 続・断捨離』 マガジンハウス 1200縁+税
 15日(日)テレビ大阪で特集番組、やってました。







【芸能・雑誌】赤ヘル
『キース・リチャード自伝 ライフ』 楓書店(サンクチュアリ出版) 2800円+税 ローリング・ストーンズのギタリスト。初版限定ポスタープレゼントあり。






















『大阪人』7月号 (財)大阪市都市工学情報センター 648円+税
特集:どう変わるキタ、どうなる大阪。
偶数月16日発売。 今号から大幅リニューアル。編集委員内田樹、佐藤友美子、釈徹宗橋爪紳也。そして、編集のプロ集団「140B」が参加。中沢新一安藤忠雄町田康らビッグネームが並ぶ。
 http://osakajin.osakacity.or.jp/newissue/index.html
神戸新聞 5.13(金)夕刊「本屋の日記」 赤ヘル登場

(平野)