月曜朝礼新刊紹介
【文芸クマキ】
■山口淳 『PAPA & CAPA ヘミングウェイとキャパの17年』 阪急コミュニケーションズ 2000円+税
“PAPA”とはヘミングウェイ。没後50年記念出版。
著者は1960年神戸生まれ、学生時代から雑誌編集、フリーで活動。現在はライター専業で「メンズ服飾とプロダクト全般を得意としている」そうです。著書、『ヘミングウェイの流儀』(日本経済新聞出版)『ビームスの奇跡』(世界文化社)他。
09年『ヘミングウェイの流儀』の取材でボストンの博物館に。目的は、彼の写真から服飾品や愛用品を見つけ、資料と照合し特定すること。いい写真が次々出てくる。何度も手を止めたのがキャパ撮影のもの。そのミニ写真集を企画、「プラス読み物」で、本書になった。
(目次)キャパ、サンヴァレーへ行く
へミングウェイが愛した、もうひとつの約束の地
映画『誰がために鐘は鳴る』をめぐって
決戦前夜、酒とポーカーと愛欲のロンドン
その時、キャパの手は震えてなんかいなかった!
ヘミングウェイ、パリ解放の英雄になる
キャパ、パパの不倫騒動に介入する
ふたりの文豪に愛された写真家、戦場に死す ……
戦場での出会い、養子縁組、酒と笑いと喧嘩、「ちょっとピンボケ」の真実、それぞれの死……、“写真が語る知られざる友情の軌跡”
■小路幸也 『オブ・ラ・ディ・オブ・ラ・ダ 東京バンドワゴン』 集英社 1500円+税
人気シリーズ、古本屋「東京バンドワゴン」第6弾。
担当クマキは、これが最終巻と思い込んでいたらしい。
帯の文句で勘違いか?
「出会いがあり、別れがあり、シリーズ最新刊、たくさんの愛をこめて。」
【海事ゴット】
■鈴木和夫 『SFアニメで学ぶ船と海』 成山堂書店 2400円+税
横浜国立大学大学院教授、造船工学。
【芸能赤ヘル】
■大島渚『わが封殺せしリリシズム』 清流出版 2400円+税
1 私の生存の意味 『夜の鼓』について 今井正下手くそ説について 岡田茉莉子は悪女になりうるか 高峰秀子はいい奥さんか 他
2 わが思索、わが風土 朝日新聞連載コラム、追悼文・弔辞
3 俘虜と天使 人物スケッチ
編者の高崎俊夫は、「映画監督である前に、まず優れたエッセイストとして深く印象づけられた」と。
思いもかけなかった激しい感情が突然胸にこみあげることがある。
『愛のコリーダ』の仕上げでパリにいた時、編集室から帰る車がふと道に迷って見知らぬ場所へ出てしまった。セーヌをへだてて目の前にエッフェル塔が巨大な姿をあらわしたのだった。それは忽然と言ってよい出現だった。その時、私の胸の中を突如として激情の嵐が貫いたのだった。
それは、ああ私はこんな風景に出会うことを人生の最終目標にしていたこともあったなという強烈な感傷だった。……「わが封殺せしリリシズム」
■林瑞絵 『フランス映画どこへ行く ヌーヴェル・ヴァーグから遠く離れて』 花伝社 2000円+税
(帯) 「栄光のヌーヴェル・ヴァーグ以降、フランス映画はどのような運命を辿ってきたのか? 映画に侵食する数の論理、業界の力学、押しつけられた価値観――日本人の知らない現代フランス映画の状況と展望……、芸術大国の苦悩と模索、そして光明。」
著者は1972年札幌出身。映画会社で宣伝担当後ライター。98年渡仏。
「ウニ丼と銭湯は恋しいが、気がつくと映画愛はそのままにフランス在住12年超」
◇荒蝦夷『仙台学 11 東日本大震災』5
高橋克彦 『絶望の縁から逃れて』
作家。釜石市出身、盛岡市在住。
「絶望の縁」とは、被災地での「作家」「芸術」の役割について。食料や燃料がないという不満があっても、書店や図書館、映画館の休業についての不満がないことに、自分が精魂傾けてきた仕事の無力さを感じる。そんなとき、たまたま宮沢賢治を再読する。過酷な農作業に従事しながら賢治が得た芸術の癒しと必要性に答えを見出す。
私はもう悩みもしなければ迷いもない。
今は心にゆとりがなくても、いつか必ずそれを取り戻し、物語を楽しんでくれるだろう。そういう人々のために私は書き続ける。
高橋義夫 『うしなわれた風景とまだ見ぬ風景』
作家、千葉県船橋市出身、山形市在住。
祖父母が関東大震災を体験したが口にはしなかった。その写真帖見ていたら父から震災の話をきかされた。必ず震災に遭うと思いこんでいた。先人作家の震災記述も記憶に残っている。
あまり楽観的なことはいえないが、なんとかなる、いやなんとかしてもらわなければならない。福島の原発がおさまらなければ、宮城、岩手に復興もすすまない。この東東北の三県が、どれほど日本経済や文化に影響をあたえていたかは、災害にあってあらためて日本中の人々が感じていると思う。
やがてこれらの土地は活力をとりもどし、復興がはじまる。復興の姿は、おそらくまったく新しいものの建設というかたちになるのだろう。すべてのものを海に奪い去られた土地に、まだ見ぬ風景が浮かび上がる。
……まだ見ぬ風景は、被災地の青年、こどもたちが、自分たちのために創出するものだ。新しい町の人々を描き出すのは、新しい作家たちの仕事だ。
ぼくの場合は、岡本綺堂や永井荷風といった大先達を手本として、うしなわれた風景、そのなかに生きた人々との人情、風俗を、生き残った同年輩や高齢の人々のこころにより寄って、書きとどめておくことになるだろう。
東雅夫 『「みちのく怪談」の時代へ』 文芸評論家、 怪談専門誌『幽』編集長。「みちのく怪談プロジェクト」運営責任者。
荒蝦夷とともに「みちのく怪談」続行宣言。日本人と怪談との歴史的な関わり――怪異や天変地異を記録し演じ、非業の死者たちを畏怖の念とともに慰霊・鎮魂してきた――を顧みる。
われわれもまた先人たちに倣い、こんな今だからこそ、プロ・アマを問わず、怪談を書き、語り、蒐め、編む……すべての関係者が襟を正し、人の心を動かす言霊の力を信じて、慰霊と鎮魂の文芸/芸能たる怪談の伝統と真摯に向き合うべきときだと、私は思う。
(平野)HP更新してます。 http://www.kaibundo.co.jp/index.html