週刊 奥の院

長谷川櫂 『震災歌集』 中央公論新社 1100円+税

 東日本大震災からの12日間を短歌で記録した。
 

 そのとき、私は有楽町駅のプラットホームにいた。高架のプラットホームは暴れ馬の背中のように震動し、周囲のビルは暴風に揉まれる椰子の木のように軋んだ。
 その夜からである。荒々しいリズムで短歌が次々に涌きあがってきたのは。私は俳人だが、なぜ俳句ではなく短歌だったのか、理由はまだよくわからない。「やむにやまれぬ思い」というしかない。

 
 津波とは波かとばかり思ひしがさにあらず横ざまにたけりくるふ瀑布 
 みちのくのとある海辺の老松は棺とすべく伐られきといふ
  救助されたる漁師のいへる
 酒飲みて眠りてあした目が覚めて夢だつたのかといへたらよきに
 つつましきみちのくの人哀しけれ苦しきときもみづからを責む
 みちのくはけなげなる国いくたびも打ちのめされて立ちあがりし国

 

 大震災は日本という国のあり方を変えてしまうほどの一大事である。しかし、詩歌はそれに堂々と向かいあわなくてはならない。いつかは平安の時代が来るだろう。その平安の時代にあっても何が起ろうとも揺るがない、それに堂々と対抗できる短歌・俳句でなければならない。

 歌を詠む者はどんな時でも詠まねばならない。
 
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(平野)