週刊 奥の院

 

ピーター・T・リーソン 著 山形浩生 訳 『海賊の経済学 見えざるフックの秘密』 
NTT出版 
1900円+税
 著者、1979年生まれ、ジョージ・メイソン大学経済学部教授。経済学の考え方で「海賊」を考える。小さいときから海賊が大好きで、海賊と経済学が「二大情熱」。
 

海賊は自分の利益を重視した。海賊を生んだのは物質的な欲求である。かれらは利潤に大きく動かされていた。……とても合理的な人たちでもあった。……自分たちの利潤を食ってしまいそうな費用を避けたり、略奪航海の収益をふやしたりするため、巧妙な――そして悪名高い――手口を生み出している。

1 見えざるフック 
2 黒ヒゲに清き一票を 海賊民主制の経済学 
3 アナーキー 海賊の掟の経済学
4 髑髏と骨のぶっちがい 海賊旗の経済学
5 船板を歩け 海賊拷問の経済学
6 仲間になるか、それとも死ぬか? 海賊リクルートの経済学
7 獲物が同じなら払いも同じ 海賊は平等主義者
8 海賊に教わるマネジメントの秘訣

 アダム・スミスの「見えざる手」は海賊にも当てはまる。「他人の利益に奉仕すれば、相手はこちらに協力し、こちらの利益に奉仕してくれる」。大きな船を奪いたいなら、海賊は他の海賊と協力する。
 商船では船長が独裁的。海賊は船を盗むから船の所有形態がちがう。その犯罪性のおかげで、民主制をつくりあげることができた。
 掟は、犯罪組織を平和裏に持続させるため。
 髑髏の旗は、彼らのライフスタイルを表わすだけではなく、標的に降伏を奨める仕組み。無用な流血を防ぎ、双方の命を救う。被害者にも有益。
 拷問は、抵抗者に残虐と狂乱を示す「ブランド構築」。商船の独裁者的船長に鉄槌。
「海賊の強制」は巧妙な奸計。
 人種寛容性、黒人奴隷を仲間として対等に扱った。
 などなど。
(平野)