週刊 奥の院


泉麻人 編著 『今和次郎・吉田謙吉 東京考現学図鑑』 学研 1900円+税
 大正末から昭和初めにかけて、今和次郎と吉田謙吉を中心に「考現学」という調査・研究をした人たちがいた。「考古学」に対して生み出された言葉。繁華街の通行人、商店街の街並み、店舗の様子などなど「その時代の断片をリアルに記録するという試み」。泉さんが解説を加えて「東京案内本」になった。
 銀座の通行人の服装について、和洋・男女別・年齢別・職業別分析。浅草の「乞食風俗」、本所・深川の「半天のまくり方」、新宿「三越マダム尾行」、高円寺・阿佐ヶ谷「家庭人雑景・途上商人雑景」、井の頭公園「自殺場所分布」、学生街「下宿住み学生持ち物調べ」など。
 圧巻は「玉の井」私娼街表通の家並商店調査図、「東京某暗黒街分析 新井泉男」。商店の分類他、看板・意匠、道案内「ぬけられます →」表示に、ゴミ箱の中身。「覗(のぞき)」という戸障子の数々、娼家の間取り・部屋・押入れ・便所まで見て回る。女性の稼ぎ、客の支払い額も調べている。     
「いかに彼女達は日常酷使され搾取されているかの経済記録・調査であり、もっとも現実的にせまる内容」で、その報告は稿を改める、とある。
 底本は、今・吉田共著『モデルノロヂオ』(春陽堂 昭和5年7月)、『考現学採集』(建設社 昭和6年12月)。
 工学院大学所蔵「採集コレクション」をカラーで掲載。
(平野)