週刊 奥の院

お知らせ
 雑誌・書籍とも「隔日配送」とお知らせいたしましが、昨日トーハンより、「22日から通常通りの配送」の連絡がありました。輸送会社の尽力で自動車燃料の確保ができたそうです。が、先行きのことはわかりません。とりあえず。
「停電」は続きますし、発行の遅れ・延期の連絡が続々とあります。

西和夫 『二畳で豊かに住む』 集英社新書 720円+税
内田百輭、二畳に夫婦で住む
高村光太郎の山小屋
永井隆の二畳の如己堂
夏目漱石中村是公、ふたりの二畳の下宿
正岡子規の病床六尺
……
 百輭は、空襲で自宅を失い隣家の隅の小屋に住まわせてもらう。三畳(実質二畳)に夫人とふたりで約3年。著作にこの頃のことが詳細に書かれている。
 隣家は某男爵邸、こちらは焼けず、二階の一室にと誘ってくれる。
百輭先生、「小屋が借りられるものならここを庵として戦雲のおさまる迄安住したい」と申し入れた。
 明かり、台所、便所なし。空襲は続く。訪問者が食べものや酒を持って来てくれる。掘っ立て小屋の生活を楽しむが、夏は蚊、冬は寒い、電気は来たが、雨だと七輪を使えない。不自由を痛感。昭和23年新築の家が完成。
 
 高村光太郎の詩、「案内」(昭和25年1月発表)
三畳あれば寝られますね。
これが水屋。
これが井戸。
山の水は山の空気のように美味。
 ……

 亡くなった妻に小屋を案内する語りになっている。花巻の山小屋。光太郎も空襲でアトリエを焼失している。

 長崎の医者・永井は二畳の家から世界平和を訴えた。
 漱石は友人とふたりで二畳の部屋に住んだ。
 子規は長い間、ふとん1枚の上だった。

 文学者が狭い空間で豊かな生活をした……、新しい文学評論か?
  著者は、神奈川大学名誉教授、日本建築史専攻。歴史・民俗・美術史など学際的交流を続け、各地で町並み調査と町づくりを行う。

 狭いながらも楽しい我が家、これは、どんな時代でも住まいのひとつの理想像であるにちがいない。狭さの意味、狭さの価値、それは何なのか。本書はそれを考えてみようという試みであった。

(平野)