週刊 奥の院


高護(こう まもる) 『歌謡曲――時代を彩った歌たち』 岩波新書 800円+税
 戦前・戦後の歌謡曲、演歌、和製ポップス、アイドル、ダンス・ビートなど、私たちが親しんできた日本の音楽を、歌手・作詞家・作曲家・編曲家、楽曲の音楽的分析、作品の影響、制作の裏方を含め論じる。1954年生まれ、音楽プロデューサー、評論家。
 たとえば「黒い花びら」の項。56(昭和31)年のプレスリーを始点にする「ロカビリー」人気全盛の時代。日本でも「ロカビリー三人男」「三人ひろし」が活躍。59年夏、ロカビリアン総出演の東宝映画『青春を賭けろ』『檻の中の野郎たち』公開。音楽担当は中村八大。「黒い花びら」はその中の1曲。中村と永六輔ふたり、一晩10曲作ったというエピソードがある。
「黒い花びら」は映画の主演俳優が歌う予定だったが、「歌唱難易度の高さからオーディションを経て水原弘の歌唱になった」。
 高さんの曲の紹介はこうだ。
 

「黒い花びら」は三連を多用したロッカ・バラードでイントロの三連符の畳みかけに呼応した“WAH WAH WA WA WA”という三声の男性コーラスにまず耳を奪われる。キーはAm。最も一般的なイ短調である。導入の“くろい〜はなびら”=“ミラソラミドレミ”の“くろい”をタセット(tacet)して無伴奏で入る演出が見事である。続いて注目すべきはAパートの最終音となる“遠い夢”の“め”でソの#。(略)
 プレスリーに代表されるロカビリーとは異なるが、それ以前のいわゆる「流行歌」とも明らかに何か違う。洗練された中に漂う悲しみ。これこそが「黒い花びら」の新しさであり戦後を代表するジャズ・ピアニスト中村八大の斬新な作曲法である。

 1曲1曲の魅力を語っていく。
 ほぼ同時代を生きてきた私、メロディはほとんど知っていますな。たぶん、読み始めたら歌っている時間のほうが長いでしょうな。また「やかましい!」と怒られますな。
(平野)