週刊 奥の院
■木村榮一 『ラテンアメリカ十大小説』 岩波新書 700円+税
ラテンアメリカの文学、それも二〇世紀以降に書かれた小説の最大の特色は、その現実とフィクションの関係性にあると言っていいでしょう。
現実と幻想・・・・・・、しかし、ガルシア=マルケスは、幻想文学も「何らかの現実に基づいて書いている」と。
「ラテンアメリカ」と総称しても(本書はスペイン語圏のみを見る)、気候・風土・歴史・民族はさまざま。ヨーロッパ列強による征服の時代が長い。政治的にも独裁国家が多かった。「文化人類学」研究対象になる地域もある。
「現代社会から原始的な時代までが共存している多様きわまりない世界」
ここに多様な想像力が育まれている。
文学の分野では、19世紀末に詩を中心にして文学運動が起こり、1910年代にはヨーロッパの影響を受けた若い詩人たちが活躍。45年チリのガブリエラ・シュトラルがノーベル文学賞を受賞。パブロ・ネルーダ(チリ、71年)、オクタビオ・パス(メキシコ、90年)が続く。
散文では、30年代〜40年代、アルゼンチンのホルへ・ルイス・ボルヘス、キューバのアレホ・カルペンティエール、グァテマラのミゲル・アンヘル・アストゥリアスらが先駆者。60年〜80年代にかけて「ラテンアメリカ文学」がブームになった。ノーベル賞は、アストゥリアス(67年)、ガブリエル・ガルシア=マルケス(コロンビア、82年)、パルガス=リョサ(ペルー、2010年)。
日本では、晶文社がボルヘスの本を出していた。国書刊行会の幻想文学大系にもあった。集英社が篠田一士らの編集で『ラテンアメリカの文学』、国書刊行会の「ラテンアメリカ文学叢書」、他大手も単行本出版が続く。
木村さんは1943年生まれ。スペイン文学・ラテンアメリカ文学専攻、現在神戸市外大学長。この分野の翻訳では第一人者。
目次
ボルヘス――記憶の人、書物の人
カルペンティエル――魔術的な時間
アストゥリアス――インディオの神話と独裁者
フリオ・コルタサル――夢と無意識
ガルシア=マルケス――物語の力
カルロス・フェンテス――断絶した歴史の上に
バルガス=リョサ――騎士道物語の継承者
ホセ・ドノソ――妄想の闇
マヌエル・プイグ――映画への夢
イサベル・アジェンデ――ブームがすぎた後に
私もかつて、わからんなりに読んだ。わからんまま・・・・・・ほったらかしの本多数。
(平野)