週刊 奥の院 第90号+1の2
◇ヨソサマのイベント
■「息、生き延びるために」 詩の朗読と音楽 港大尋 澤和幸 季村敏夫
2.22(火)19:00〜20:30 ギャラリー島田(078−262−8058)
入場料:2000円
季村さんの新しい詩集。
『ノミトビヒヨシマルの独言』 書肆山田2600円+税 装幀 間村俊一
(帯)から
いささか醜い背骨のない虫けらが雫ほどに小さく跳ねる。その一身を歴代の醜い記憶が圧する。吐息は潰される。だが、起き上がれと促すものがある。もう一度、あがく。風の中へ歩み入る。
(あとがき)から
日経新聞の「私の履歴書」に俳人・森澄雄が書いていた。北ボルネオからサイゴン経由で広島大竹に復員していて、季村の父と同じコースだった。連載中に、ボルネオで行き倒れになった青年が奇跡的に生還した。
起き上がれと息を吹きかける青年の祖父、わたしの父、いまなお盛りに棲息する幻の兵士まで目覚めさせる出来事だった。
ノミトビヒヨシマルは『ツァラトゥストラ』の序説に出てくるノミトビヨロイムシを連想させるが、微小な息となって生き延びるところは似ているのかもしれない。
06年発行『たまや 03』(山猫軒)で書いている。
ちょうど一年前、盛岡の叔父が死んだ。戦前、満州国中央気象台に勤めていたらしい。当時秘かに画策されていたユダヤ人自治区に関する話など格別だった。私はハルピンからハイラルに転戦した父を若年のころに亡くしているので、叔父を喪い、これで外地を体験した血族は一人もいなくなった。もっと話を聞くべきだったと今頃侮やんでも仕方あるまい。父との関係も同じである。軍歴簿を見つめながら、召集、復員、疎開、これら「死語発掘」作業を、せめて、詩作のなかで試みようと念じている。
血族と戦争を辿る詩集。
◇『盤上のアルファ』その4
■塩田武士『盤上のアルファ』 早くも重版決定。
(平野)