週刊 奥の院 第85号+1の3

河谷史夫 『夜ごと、言葉に灯がともる  本に遇うⅡ』 彩流社 2200円+税
『選択』連載読書エッセイ2冊目。06年〜10年。
(あとがき)より。
 

好き嫌いを押し通して、独断と偏見とに満ち書評ではなく、本の紹介とも言えず、孤独で勝手な感想みたいな文章を、編集部はよくもまあ、一度も文句も言わずに載せてくれたものだと、今ごろになって何やら有難さ、いや募る思いがしてくる。
 何事も気づくのが遅いのである。(略)
 もとより学者でもなければ研究者でもない。
 新聞記者という浮草稼業であった。
 本を読むといっても、体系的な読書などというものとは縁遠い。行き当たりばったり、その場その場で拾い読み、立ち読み、寝転がり読みして、あげくは読み捨ててきたものばかり、ほとんど記憶の彼方へ消えている……。

 読書は、量より質が肝心、読むなら原書・原典、再読三読、書斎にこもって居住まいを正し、メモを取り赤線を引き書き込みを入れ…・・・、そういうことは秀才におまかせして、私らは好きなモンを好きな時に好きな場所で好きな格好して、読みましょうよ。
ランボーとみすゝ゛」

本と出会うことは事件なのである。

 小林秀雄の文章を引き、金子みすゝ゛を発掘した矢崎節夫のこと、ランボーとみすゝ゛の詩を論じる。
 他に、「噺家たちの最期」、「己に朱を入れた詩人」、「赤提灯のコラム子」、「いまは『女房の亭主』」、「物語にするのはよせ」など。
 何の本か誰のことか、読みたくなるでしょ。
(平野)