週刊 奥の院

井上章一

 週刊 奥の院 第77号+1 その3 
 実は、どうでもエエことなんですが、「奥の院」72号が2回あると、愛読者KURARAさんの指摘。「嗚呼知らなんだ、知らなんだ〜」。よって今号より号数表示を上記のように変更いたしますです。「アホちゃうか?」。
井上章一『ハゲとビキニとサンバの国 ブラジル邪推紀行』 新潮新書 680円+税
 建築学者だけれど、最近は「フーゾク」、ちゃう、「風俗史家」としての方が有名かも。もっとも、私がソッチ方面の本しか見ていないから。ちゃんと仕事してはります。
けど、この書名はなんじゃいな? ブラジルの人、怒らはるわ。
 井上さん、2004年秋に2ヵ月半リオデジャネイロの大学で、日本文化を講義。現地になじみ、観察もしてきはった。そう、「リオで私も考えた」。
リオ滞在は今回含め計5回、総計4ヵ月ほどで、それでも「日伯文化比較」をしてしまう。
 で、なんで「ハゲ」なんか(なのか)?
 ブラジルでは「ハゲ」がもてる。日本と「ハゲ」に対する見方が違う。酒場に行くと、女性歌手が「ハゲ」の歌を歌ってくれ、「ハゲ」頭にキスをしてくれる。歌は1曲や2曲ではない。井上さんが調べただけで7曲もある。
「ハゲ」で悩む日本人は多いそうだが、このギャップに驚く。「日本文化はハゲを不幸にする」。
 1曲歌詞を見てみる。

われらハゲ仲間は、女といるとき、最高だ。こまった時、女はわれらハゲがいちばん好きになる。はずかしいことはない。あなたの帽子をとりなさい。

 井上さんは悟った。理解した。

ハゲが、無条件で女にもてるという歌ではない。女は「こまった時」だけ、ハゲに頼るというのである。(略)さらに、ハゲにはずかしがるなと、よびかけている。つまり、はずかしがるハゲが、一般的には多いのだ

 そして、告白する。

判断をあやまったというべきだろう。短期間の滞在だと、見抜けないことは、たくさんある。それで、おてがるに、日本とは正反対だというイメージが、ふくれだす。エキゾチシズムで、目がくもらされたのだと言うしかない。

「エキゾチシズムによる差異の増幅をいましめたい」と書きながら、「おさえても、いくらかはでてしまうような気がする」、「話半分ぐらいにうけとめよ」とは、皆ホラかいな? どんな本や!
 彼の地の、小さなビキニ、ボサノヴァ、宗教などに着目しながら、意外な文化・風俗を解説し、かつ日本をとらえなおす。
 私たちはブラジルについて何を知っているだろう。サッカー、リオのカーニバル、サンバ……。一昨年は「ブラジル移民」百年だった。

◇今週のもっと奥まで〜
サタミシュウ 『はやくいって』 角川文庫 476円+税
09年2月刊。SM青春小説6篇。ある日、角川文庫の棚を見たら、派手な帯のひと群れ本。
“密かな楽しみ 妻に内緒で読む本フェア”
 角川文庫にそんなシリーズがあろうとは、「今の今まで気づかなんだわいなあ」。
 あんまり何なので、紙版でも伏字あり。
五月と真奈美は大学で同級生だった。五月はいまやMで愛人。真奈美はプロのS女王さま。そんなふたりが久々に会って、年下の男性と交際が始まる。
 カバージャケットがとっても……です。検索してみてください。
(平野)