週刊 奥の院
週刊 奥の院第77号の2
■ベルント・ブルンナー 『熊 人類との「共存」の歴史』 白水社 2400円+税
熊さんと出会うのは「ある日森の中」で、出会っても「お逃げなさい」と言ってくれるはずだった。そして、落し物まで届けてくれ、一緒に歌うのだった。(馬場祥弘作詞「森のくまさん」)
かつては明らかに熊と人間には、棲み分けというか境界があったはずで、人間が熊の側に踏み込んだとしても、両者が互いに警告を発していたのではないか。
ニュースによると、今年は猛暑で好物の木の実が少ないらしい。山に食い物なければ人里に来るわな。捕獲されるか殺されるかしかない。かわいそうなのは熊の方かもしれない。
熊との関わりはどうだったのだろう。
熊は時に直立する。二本足で立つ。人類の祖先がそれを目撃したり、突然出会って……。
当時の人びとは熊に対して二通りの見方をするようになっていた――自分たちと深くかかわり合った存在であると同時に、恐ろしい敵としてである。原始的な武器しか持たない当時の人びとに対して熊は手ごわい相手だったが、長い目で見れば結局は人間が勝者となった。人類は熊のテリトリーを少しずつ侵略し、畑として活用するために森の木という木を伐採し、臆病な相手を追い出してしまったのだ
文化人類学者アーヴィング・ハロウェルによれば、
「熊は正義を維持する森の支配者、最高権力者の息子として崇拝されていた」
分布範囲は広いが、
「いずれの地域でも狩りで殺された熊は新たな生を受けるという信仰を持っていた」
人類は「熊を尊び、殺し、虐め、食物を与え、食べ、敬い、忌み嫌ってきた」。
現在、熊の置かれている立場は深刻である。(略)われわれは熊がどういう動物なのか、熊がどう感じているのか、本当にわかっているのだろうか。熊は本当に危険な肉食獣と思われて仕方のない動物なのだろうか。もしそうだとして、近年において実際に犠牲となっているのはどちらだろう。
熊を、猪、猿に置き換えても同じでしょう。
第1章 熊の辿ってきた道
第2章 変異
第3章 ドウクツグマの謎
第4章 誤解
第5章 異国での発見
第6章 熊の個性
第7章 音、感覚、合図
第8章 ペットとしての熊
第9章 東シベリアでの観察者
第10章 対峙する
第11章 狩る者と狩られる者
第12章 イヌイット族とホッキョクグマ
第13章 もっと、もっと近くに
第14章 熊のショー
第15章 熊の代役
第16章 熊恐怖症
(平野)