週刊 奥の院

北方

週刊 奥の院 第75号の4
◇今週のもっと奥まで〜
北方謙三 『抱影』 講談社 1600円+税
 ハードボイルドだど。(アップ後間違い発見、主人公の名前まちごうた。恥はそのまま置いておく)
 横浜でバーを経営しながら絵を描く硲冬樹(はざま、本名は裕樹……間違い発見、本名「乾冬樹」)。医師で人妻、響子を30年愛し続けている。会って食事をするだけの交際。彼女に死期が迫っていることを知らされる。彼女をモチーフに作品を仕上げ、最後にその身体に絵を刻み付ける。彼女も同意し、1ヵ月以上かけて完成、硲は歓喜にふるえる。
 しばらくして、彼女の夫から死を告げられる。
 元の従業員が外国人娼婦がらみで暴力団に殺される。「やつらにひと泡吹かせたい」。相棒とともに組織同士を抗争させるが、最後はひとりで決闘に……。
 紙版引用は、響子のイレズミが完成した場面。別の女性とのシーンがあるのだが、本書のテーマは“純愛”だから、ここしかない。

「あたしの躰の絵、あたしと一緒に、消えてしまうんだよね」
「消えるよ。だから俺は、美しいという言葉さえ遣えると思う」
「画家が、美しいなんて言うんだ」
「その絵についてだけは」
「そうか、美しい絵か。硲裕樹(ここも間違い、硲冬樹)、ほんとうに美しいかどうか、よく観てみろ」
 響子が、バスローブを脱ぎ捨て、鏡の前に立った。

◇お知らせ 
勁版会10月例会「10年後も本屋でメシが食えるのか 《非カリスマ書店員座談会》」
とき:10.15(金) 19:00〜20:50頃 
場所:海文堂書店2Fギャラリースペース 078−331−6501
参加費無料。終了後、懇親会を予定。参加費3000円程度。
尚、海文堂の営業時間は19:00までです。それ以降に参加される方は、建物の案内のとおりご来場ください。
 
 同会は発足して28年、例会は323回を迎えます。関西の出版関係者、書店有志が毎月ゲストを呼び勉強会をしています。
 今回の内容は、海文堂PR誌「ほんまに」第11号に登場した「非カリスマ書店員座談会/10年後も本屋でメシが食えるのか」続編です。
 ゲストは、逢坂肇さん(垂水・文進堂書店)、地道裕勝さん(ジュンク堂西宮店)、そして海文堂の“赤ヘル”北村知之です。
 さて、3人の話から出るのは、「希望」でしょうか? それとも「悲嘆」でしょうか? はたまた「大法螺」か……?
(平野)