第39号 2010.1.22.

美女と機械

週刊 奥の院 第39号 2010.1.22.
◇人文社会
■原克(はらかつみ) 『美女と機械 健康と美の大衆社会史』河出書房新社 2400円+税 
 著者、1954年生まれ、早稲田大学教授、表象文化論・ドイツ文学専攻。
 目次 第1章 優雅な女 健康美イデオロギーの誕生
    第2章 美しい女 理想の体型と優生学
    第3章 フィットネスな女 美しい身体と機械信仰
    第4章 危険な女 個性的な身体の誕生
 何やら“危険な香り”――私的には“Hな香り”がする本ですが、違う。
 「健康で美しい女性の身体」「うわべだけの美しさではなく、エクササイズをして身体の内部から本当の美しさを輝かせる」「健康美、これこそ真の女性の美しさ」……。
 この「健康美神話」はどのように作られてきたのか? 完成後どのように変質していったのか? その道筋を明らかにするべく、女性雑誌やエクササイズ専門誌を読み解いていく。科学雑誌も最新の機械を紹介して「神話」を支えた。
20世紀アメリカの白人中流社会における「神話」。体操(エクササイズ)と食餌療法(ダイエット)、最新の機械を使って、美の基準(?)「スリーサイズ」を作り上げる。
「これまでにない視点から、身体を管理する行為に新しい意味が付与される」。「健康美あふれる『理想の体型(フィギュア)』こそ貴いもの」と。そのために、エクササイズ、フィットネスクラブ、ダイエット。完璧なスリーサイズになれば、素敵なボーイフレンドができ、優れた男性と結婚、優秀な子ども、幸せな家庭……、この図式がくりかえし「語られてきた」。
「これは本来的な事実であるというよりも、それを事実であると考えるようにしむける偽装の体系」で「あらたに生みだされた幻想」。
「危険な香り」でしょ? 2章の「優生学」なんて。それにしても、相変わらず「ダイエット本」や「美容本」が売れます。「ビジネス成功本」と同様、同じ人が繰り返し読んでいるんでしょう。女性たちよ、エエカゲン気づけよ。
前にお客さんに教えてもらったのだが(世間の常識かも?)、「PLAYBOY」に登場する美女たちは皆、上から下まで全身整形だと。男性共よ、騙されるな。
◇今週のもっと奥まで〜
松尾スズキ『老人賭博』 文藝春秋 1333円+税
芥川賞候補、残念。
本書内容については、当ブログ1/9をご覧ください。紙版での引用はマッサージシーン。ナニの場面ではありませんが、とっても○です。
◇雑記 まだ新刊が少なくネタ不足。「雑」で埋める。次号からはご期待……してはりませんよね。
(1)ドラマ「筆談ホステス」で泣いてしまった。早速「週刊文春」がウソと暴露。華やかな世界だから、いろいろありましょうよ。
(2)TVネタが続く。「情熱大陸」の「奇蹟の画家」最後の個展の場面、「女神」が絵から出てきて微笑む。よくよく見たら当店のT女史だ。見え透いたおべんちゃらです。焼きそば定食か、たこ焼き定食でいいです。
(3)紙版定期購読者Yちゃん(♀)、前号の「奥まで〜」の絵(“ひさうちせんせ”の絵を私が模写して、うすーくコピーした)がよく見えぬと「ミーツ」をめくったとのこと。たぶん仕事もそれくらい熱心なはず。
(4)1/20(水)「新春早々呑み会IN赤松」。出版社、新聞社、書店から19名参加。立ち呑み「赤松酒店」特設ルームで盛り上がりました。そもそもは地元出版社の女史と私の極秘デートだったのに、いつのまにやらドンチャン騒ぎ。20代・30代も多く、おっちゃんたちも嬉しかった。新しい出会いを大切にしておくれ。
(5)この時期、阪神・淡路大震災をメディアが取りあげてくれる。以前は「今だけか?」と思ったものです。すっかり「季節番組」として定着しました。TVドラマも人気者が主役で、全国の人が注目してくれたことでしょう。1年に1回でも思い出してください。 
当店のある元町界隈だけでも次々高級高層マンションが建っていますが、果してこれが震災から得た「教訓」を活かした「復興」なのでしょうか。
(6)芥川賞直木賞予想、私またも惨敗。いつものようにF店長の一人勝ち。悪運だけはある。私はいいんです。運という運は「美人妻」で使い果たしておりますので。ずっとオマケの人生ですよって。それにしても芥川賞該当作なしとは。せっかくの賞なのだから誰かにあげたらいいのに。
(7)前号でウダウダ書いた「ダイエット本」、ついに当店ベストセラーの4位に浮上。私ドツボにはまっていきます。居直ります。「な、あったら売れるやん!」。
(平野)