■『老人賭博』   松尾 スズキ著/文藝春秋 1400円+税
皮膚の病気のせいで整形手術を受け、つぶらな瞳になったマッサージ師の主人公。客の映画関係者の「センセイ」に弟子入りして、つまらん映画の撮影現場に同行。だらけた現場でだらけた連中が主役の老優をネタに賭けまくる。
冒頭の速い展開とその後のだらだら感が独特の面白さ。本当の映画制作ってこんな感じかもと思わせるのは、『センセイ』がまんま著者に見えてしまうから。グラビアアイドルの海ちゃんもいい感じで、映画で見てみたい作品です。
松尾スズキは劇団主宰者で演出家で俳優で脚本家で映画監督で作家でもある多才な人。そこにいるだけで「変」な空気が流れるその存在感は、この小説にも充分あふれています。
さあて、第142回芥川賞の行方はいかに。
海文堂スタッフは限りある想像力を駆使して現在鋭意予想中であります。河出文藝系か、覆面舞城か、やはり文春文学界か?
今のところこの『老人賭博』が一番人気。タイトルがいいと言う意見も。はたして?!
発表は1月14日、5時から審議が始まります。
(熊木)