週刊 奥の院 第37号  2010.1.8.

震災本

週刊 奥の院 第37号 2010.1.8.
 新年おめでとうございます。今年もおつきあいを願います。
◇神戸の本
■『不死鳥レールウェイ 震災の街を走る鉄道』奥田英夫・写真 神戸新聞社・編集協力
神戸新聞総合出版センター 1500円+税
 阪神・淡路大震災では鉄道も大きな被害を受けた。駅が潰れ、電車は脱線、運行区間は寸断された。代替バスが運行されたが、道路も被害を受けており、市民の足はズタズタになった。
今回の出版について奥田さんが苦しい胸中を語っている。鉄道マニアが興味本位で撮影したのではないけれど、「震災で生活が一変された方々のご理解・ご賛同が得られるかどうか?」と。
奥田さんも被災者で、大阪まで毎日バスと鉄道を乗り継いで通勤した。その道のりにカメラを携え、鉄道の非常事態と復旧過程を記録したのだった。
これまでにない行き先表示や運行案内、代替バス・他社線駅への案内図、被災者を励ますポスターやステッカー、仮設ホーム……、復旧の様子が細かに撮影されている。運行区間が少しずつ伸びていくのは、まさにひとりひとりが元の生活を取り戻す過程に重なる。
つらい・悲しい思い出だが、私たちはあの体験を忘れてはいけないし、後世に伝えなければならない。
付録に各線の車内放送を収録したCDがついています。
◇フェア第1弾 『善九郎 神戸の風景』 1F 西入口 1月31日まで。
 2Fで木藤善九郎さんの風景画絵はがきを23点販売しています。阪神・淡路大震災をきっかけに、懐かしい風景・建物を描いてこられました。このたび一挙70点を展示販売します。
 他のフェアは「日記・手帳・家計簿」販売終了後、16日より。次回ご案内します。HPをご覧ください。
◇新入荷
■『Donogo‐o‐Tonka』創刊前夜号 「特集・辻潤 遺墨」 りいぶる・とふん 1000円(税込)
 京の僧にして詩人・文芸評論家、扉野良人さん編集。B5版、オールカラー。08年末「創刊準備号」(700円)が出て、このたび「前夜号」。「モダニズム探求誌」。
「ドノゴトンカ」と読む。編者による、昭和の初め20代前半の詩人たちが作った雑誌にちなむ、そもそもはフランスの映画シナリオ。詳しくは「準備号」を。
 目次 ●辻潤遺墨 ●反動の書法 ●辻潤の遺墨書画について ●辻潤吉行淳之介 ●×と○ ●辻潤稲垣足穂 附・正岡蓉「新花鳥文人往来」 ●「ゼロ」への憧れ 『大菩薩峠』を読む辻潤 ●居候論 辻まことからみた辻潤 ●年譜 他
■豊田和子さんの色紙絵入荷。
 『記憶のなかの神戸』(シーズプランニング)の豊田さんが描く縁起物色紙(複製)、「干支・寅」(400円)、「雛人形」(3種各600円)を販売。2月に2Fギャラリーで個展を開催します。07年11月に続いて2回目の作品展です。詳細は改めて。ファン(ライバル?)が多いので情報は小出しにします。
◇今週のもっと奥まで〜
■『ファインプレイ』三田完 「小説現代」1月号掲載。
 新聞記事にかつての恋人の名が。長唄三味線で「文部大臣新人賞」受賞のニュース。バブルの頃、高級風俗店で出会った女性。店外でデートする。歌舞伎を見たい、三味線を習いたいと。やがて彼女は別の男性との結婚を告白、最後のデートは玉三郎出演の「道成寺」。
■『ドライブ』藤代冥砂 宝島社文庫 457円+税
 著者は写真家・小説家。2003年度講談社出版文化賞写真賞。本書は女性ファッション誌に連載したもの。「車の話の入った恋愛小説」がいつのまにか「おしゃれな官能小説」になった。
 昨年同様、あのシーンは紙版でご覧いただきたい。
◇あとがき
 『ドノゴトンカ』とは関係ないのですが、年末「トンカ書店」棚の『森茉莉全集』(5万円)が売れてしまいました。ご覧になっていた人がいらしたのは存じていたのですが、私、顧客のSさんのお相手をしているうちに、レジに。ありがとうございます。
 10月の『足穂全集』に続くホームラン。さて「トンカ」、次は、な、な、何を出品する?
(平野)