週刊 奥の院 第32号 09.11.27発行

◇ 作家さんご来店 ふたり同日、11/21(土)
 ■『米吐き娘』(講談社)の古林海月さん 編集者と海文堂で待ち合わせて会議。
 ■グレゴリ青山さん 新刊『田舎暮らしはじめました〜ウチの家賃は5千円〜』(メディアファクトリー・950円+税)にサインを。手作りのPOPも。
「これは田舎ぐらしをオススメする本でも、田舎ぐらしなんてやめときなはれ、と言う本でもありません。家賃の安さに目がくらんで田舎ぐらしを始めたマンガ家の汗と涙と肥(こえ)の実録田舎ぐらし本です。ぜひ読んで下さいませ〜(グ)」
 京都の山奥からはるばると……、狸か熊みたいに言うて、失礼。感謝しています。ほんまです。
◇また書名に釣られて紹介。 
 佐藤弘人(1887〜1962)『はだか随筆』(ダイナミックセラーズ・1200円+税)
 初版は1954(昭和29)年。一橋大学経済学先生の随筆だが、とても柔らか。聖談と思っていたら、性談・Y談・珍談・漫談。当時の文学者たちが絶賛してベストセラーになったらしい。精子、お尻、乳房、放屁と、型やぶりの先生だったのでしょう。
◇神戸の本 
加藤政洋『神戸の花街・盛り場考』(神戸新聞出版センター・1600円+税)
著者は1972年生まれ、文化地理学専攻、立命館大学准教授。著書は、『大阪のスラムと盛り場』(創元社)、『花街』(朝日選書)、『京の花街ものがたり』(角川選書)、『敗戦と赤線』(光文社新書)など。
「盛り場」とは?
「種々雑多な商店、飲食店、そして映画館などの娯楽施設が不規則に建ち並ぶ通りや一画。これだけでは『盛り場』とはならない。そこを、こちらへあちらへと、ひっきりなしに行き交う人たち、喧噪と雑踏、それらが独特の雰囲気を醸し出す場、さしずめ出店のひしめく縁日の賑わいが日常的に繰り返されるような場」
そして「夜のとばりが降りる頃には、その表情が一変(中略)猥雑で淫靡な貌もある」
「盛り場」の多くは、江戸時代の寺社の縁日や、芝居小屋・茶店、その周縁の「悪所」を起源とする。明治になると、「悪所」を受け継いだ見世物小屋・芝居小屋、その周囲の飲食店、花柳街など遊興の街として発展する。東京の浅草、京都の新京極、大阪の道頓堀や千日前、神戸では湊川新開地。「現在のようなターミナルの周辺に展開する繁華な街区とは多少おもむきを異にしている」。
神戸ではどう発展してきたか?
開港で始まる神戸は、城下町や門前町ではない新興都市。本来なら古い港町の兵庫が中心になったのだろうが、開港によって近代化の舞台は居留地とその周辺になった。居留地の西側に貿易関係会社や銀行、交通量の多い旧西国街道は商店街(これが元町)になる。小さな工場ができる。明治中期には、川崎・三菱の造船所など大工場が進出し、港湾都市と同時に工業都市となり、市街地は東西に拡張する。そんななかで、個性豊かな場所があちこちにできる。「住宅地やオフィス街、あるいは工業地といった、特定の機能に立脚した均質性の高い空間というよりは、むしろさまざまな要素が混在・共在するような場所」で、「人々が語り、足を向けたくなるような熱いトポスとして存立していた」。
目次
 第1章 神戸モダン名所 東から西へ〜幻のガイドブックを片手に〜
 第2章 小唄の風景をたずねて〜モダン神戸の花街めぐり〜
 第3章 「西新開地」の成立と発展
 第4章 盛り場化する商店街
 第5章 元町〜西国街道から遊歩者たちの街へ〜
 わが中学の西門からさらに西へ行くと、花隈。毎日通る道ではない。たまに遠回りで帰る。三味線の音が聞こえた。今はどうなのだろう?
 「花街」といえば、「花街の母」(もず唄平)「他人に聞かれりゃお前のことを年のはなれた妹と〜」とか、「下町育ち」(良池まもる)「三味と踊りは習いもするが習わなくても女は泣ける〜」やら、「円山・花町・母の町」(神坂薫)「母になれても妻にはなれず〜」などが思いうかぶ。
 私の育ちは裏長屋、その表側には酒場があって、きれいなお姉さんたちが住み込みで働いていた。昭和30年代。幼少の頃は可愛らしかった私は、お姉さんたちにそれは可愛がってもらった。私が生涯でいちばんもてた時期だと、今思う。郷里にわが子を残して働いていた人もいたはず。まだ「戦後」だった。
 ◇今週のもっと奥まで〜
 ■五木寛之・作 伊坂芳太良・画『奇妙な味の物語』(ポプラ社・1429円+税)
 もともとは1969〜70年に雑誌『漫画讀本』(文藝春秋)に掲載された。88年集英社から刊行されたが、伊坂の絵は入らなかったようだ。今回復刊で、ふたりのコラボが復活、ポプラ社エライ! 帯のふたり、若い!
 伊坂(1928〜70)はグラフィックデザイナー、雑誌のイラストでも活躍した。彼の描く女性は、子ども心に「H」だった。「ビッグコミック」をドキドキしながら読んだ。
 五木の短編小説は、笑いあり、怖さあり、Hあり、まさに「奇妙なお話」。
 引用は紙版で。
 ■玄月「宴の後始末」 「小説現代」12月号に掲載。
 酒が入ればとんでもなく○○になる女教師との淫らな関係。その後に来る恐ろしい結末。男は自分のやったことの結果を引き受ける。当然。
 引用はHすぎてできず。紙版でも自粛。
(平野)