「週刊 奥の院」 第30号 09.11.13.

伊藤

 1 作家さんご来店 
(その1) 11/6(金) ノンフィクション作家で夙川学院大学教授・後藤正治さん。神戸の画家の評伝を執筆中。海文堂が脇役で登場する?
(その2) 11/7(土) かねてご案内のとおり、高田郁さんサイン会。宝塚にお住まいで、ご幼少時から父上とご来店くださっていたとか。トーク会は立ち見が出、サイン会は長蛇どころか大蛇の列。私も最後にサインを頂戴。可愛い「澪」の判子も。
 2 内田さんに会った。 11/9(月)新潮社の新刊『日本辺境論』(新書、14日予定)の書店向けキャンペーンで、神戸女学院大学教授・内田樹さんの講演会。本の紹介は次回。事前に読むようゲラ見本をもらっていたが、毎夜の深酒、ヨダレと鼻チョウチン状態で、当日20数ページ残っておった。これくらいなら行きの電車内で読めると高を括っていた。元町からJR快速、三ノ宮で車両を移れば絶世の美女おふたりが「平野さん、ここすわりー」と手招き。吸い寄せられて畏まる。合わせて130歳は越えようかという大人の魅力にクラクラ。ここでハードに「女の色気は読書の邪魔」と決めておれば。何せ根が軽薄なお調子者ゆえ「まあまあしばらく、お元気ですかー」と猫なで声でご挨拶。お姉様方のしゃべりは「すべり台に流し素麺」で、とうとう大阪までノンストップ。私、「ハイ」と「頷き」だけ。ついに読了せぬまま内田さんのお話拝聴。
 3 ヨソ様のイベント紹介
(その1) “旅する洋画家 長尾和 展 素描・水彩・油彩 〜地中海・中国・瀬戸内〜” 11/12(木)〜24(火) 10時〜18時 但し18(水)は休館 於:こうべまちづくり会館ギャラリー(元町通4丁目) 入場無料。当店にて長尾さんの画集『地中海・瀬戸内をゆく』(エピック・3800円+税)を販売。
(その2) 横溝正史生誕地碑建立5周年記念イベント 11/22(日)14時から 講演会 有栖川有栖「私にとっての横溝正史」 於:ハーバーランド東川崎地域福祉センター。問い合わせは「神戸探偵小説愛好會」noraneko@portnet.ne.jp
(その3)同上 横溝正史原作映画特集上映 11/21(土)〜27(金)『本陣殺人事件』(1975年 高林陽一監督) 11/28(土)〜12/4(金)『悪魔の手毬唄』(1977年 市川昆監督) 『獄門島』(同) 於:ハーバーランド・シネモザイク(078−360−0700)
 4 「今週のもっと奥まで〜」
サンデー毎日」11/22号 先週紹介した『甘苦上海』の高樹のぶ子さんと、熟年世代の性を取材した『炎情』(中央公論新社)の工藤美代子さんの対談。「女50代の性」。記事抜粋は紙版にて。
 5 「人文社会」  
 伊藤之雄伊藤博文 近代日本を創った男』(講談社・2800円+税)
ことし没後100年。倒幕運動から廃藩置県岩倉使節団西南戦争、初代内閣総理大臣、条約改正、日清・日露戦争、初代韓国総監、暗殺と、ずっと政界の中枢にあり続けた。兵庫・神戸にとっては、開港場の責任者から初代兵庫県知事(26歳)。幕末にはジョセフ・ヒコの世話でイギリスに密航。歴史上の人物として良いイメージがない。政治家としての理念がなく、大久保・木戸・岩倉らの間をたくみに渡り出世、保守反動、反近代、反民主、最後は朝鮮弾圧で殺害、さらに女性問題と評価が低いなどなど。なぜか? 著者によると、若い時から死ぬまで活躍したことから、史料が多すぎて一人の研究者の力では困難であった。本書でそのリアルな外交・内政から植民地統治、人柄まで再評価する。来年は暗殺者・安重根の没後100年。「奇妙なことであるが、安重根の人柄を知るにつれ、立場こそ異なるものの、正義感・意志の強さ等、伊藤のそれと似ている面が多いことがわかってきた。信念に生きた人間として、伊藤と共通する親しみすら感じる」。
 日韓・東アジアの相互理解と連携の一助と願う。
 小島毅『父が子に語る近現代史トランスビュー・1200円+税
 「日本の歴史を学ぶことは、外国とつきあう場合にこそ大事になってくる」
 目次から 1.何のための日本史? 2.他者の視線への配慮 3.江戸の二つの歴史認識 5.定信の画期的教育行政 9.幕末の動乱早わかり 18.韓国問題と日清戦争 19.日露戦争は防衛戦争ではない 24.「吉野朝」と国家神道 27.戦争の責任を考える 30.シルクロードと韓流 など。
 日本が日本であり続けた、今もそのままであるということはどういう意味を持つのか、よその国々の歴史とも比較したうえで、これからこの国をどのように受け継いでいったらいいのか、また受け継がないのか、そのことを考えるためにも歴史についてのきちんとした学習が必要と。2010年は「日韓併合」100年、2011年中国「辛亥革命」100年。東アジアの歴史と将来について考えてみる節目です。
 三谷博・並木頼寿・月脚達彦編『大人のための近現代史 19世紀編』東京大学出版会・2600円+税
 日本とその隣国に住む人々のための東アジア近現代史。「なぜ、『歴史』が問題となるのか。日本人の観点と中国人や韓国人の観点はどこが違うのか。いざ歴史についてコメントを求められた時、どう答えれば良いのか。その時にただ自国の観点のみを提示するのではなく、相手の視点も理解し、その上でどう対話を進めてゆくのか。直ちに共通の歴史認識を得るのは無理としても、そういった賢明かつ上手な知的態度が、東アジアに生きる人々すべての、言わば『人間力』の一部として、求められる時代になっているのである」。
 目次から 1.日本開国への決断 2.東アジア近世の世界秩序 3.日本社会の近世 4.琉球社会の近世 5.朝鮮社会の近世 6.中国社会の近世 他全27章。
(平野)