■『蝶であった日』    中本百合枝著/書肆山田 2500円+税
 初めて詩集を紹介します。人間を二つに分類する方法は色々あるけれど、詩が解るか解らないかっていう分け方もありますよね。それで言うならわたしは解らない方。ことばを字義通り捉えてしまう頭の固い人間です。それでも解らないなりに心を動かされることもある。
わたしは/鼠だ/ながいこと隠してきたけれど/
実のところわたしは/紛うかたなき/鼠なのだ/
うたた寝から覚めて/家人に話しかけるような時には/
うっかり/鼠語になることがある (五月の鼠)
 著者の中本さんは神戸市西区在住。本書は2冊目の詩集です。かつて人生の曲がり角に立った時に、1日10分間だけパソコンの前に座ることを自らに課したそうです。自分を見つめリセットするための時間。そこで生まれたのは、死と再生をテーマにした幾つもの詩草でした。光のあるものを書き、傷ついた人に寄り添いたい。苦しくて書かずにいられなかった中本さんの、詩への衝動が結実した詩集です。
(熊木)