kaibundo2009-08-15

■『おさがしの本は』     門井慶喜著/光文社 1600円+税
こんなタイトルの本に必ず引っかかってしまうのが本屋の性。この本が発売された7月のある日、きっと全国の文芸書担当者はじっくり中身を点検したことでしょう。
でも舞台は本屋ではなくて公共の図書館。超まじめ人間の若い男性司書が、利用者の問題を解決します。とは言え、結局アドバイスが間違っていて短大生に逆に教えてもらったり。公共であるが故の内情や利用者への不満も盛り込まれ、司書さんの苦労がしのばれます。うまくおさがしの本を見つけた時の快感や、外してしまった時の赤面、分からなかった時の自己嫌悪は本屋と同じ。まったくその通りと共感することしきりです。
1971年生まれの著者はミステリー系の新人賞出身でこれが4作目。この本もミステリーに分類されるけれど、本屋を舞台にした大崎梢「配達あかずきん」同様、人が死なないし安心して読める〈日常の謎〉系。ミステリーが苦手な私でも大いに楽しめました。
(熊木)