■『海岸線の歴史』 松本健一 / ミシマ社 1800円+税 装幀 クラフト・エヴィング商會

(目次) はじめに 海岸線は変わる
     第一章  陸と海、神と人間が接する渚―古代から現代まで
     第二章  山中にも海があった―古代を中心に
     第三章  海岸線になかったが―中世のころから
     第四章  白砂青松の登場―江戸時代
     第五章  『海国兵談』とナショナルな危機意識
     第六章  「開国」と海岸線の大いなる変化
     第七章  砂浜が消失する現代
     第八章  海へのアイデンティティ
     終章   海岸線を取り戻す―ナショナル・アイデンティティの再構築を求めて
 自然現象による海岸線の変化がある。古代の交易都市トロイアは、河川の流す大量土砂で陸地が広がり、中心部が海から遠くなって衰退したという。人工による変化の代表は香港。人口2000人の寒村から世界有数の貿易港になる。深い海岸が西欧列強の巨大船に適した。日本の箱館、横浜、神戸も同様だ。港として発達すると、埋め立てで波止場が拡大、造船所や工場ができる。
 日本の海岸線は35000km、アメリカの1.5倍、中国の2倍。この海岸線がどのように変化してきたか、古代に遡って「日本人の生きるかたち」を問い直す。明治の初めまで、平野で農業をし、海に面した円い浅い「湊」が栄えた。近代化で、浅い海は干拓して農地になり、深い海は工業用の「港」になった。戦後も干拓は続いたが、今や減反の時代。砂浜もなくなりつつある。


(平野)